簡単ではない「適材適所」
農作物を無駄にせず、失業対策にもなるこのシステムは、一石二鳥で画期的かと思われましたが、いくつかの問題点を抱えています。
まず、熟練外国人労働者が担っていた、経験が必要な肉体労働に耐えられる人材がどのくらい集まるか、という点です。都市部の観光業に従事していた人たちが、急に難易度の高い農作業に携わるのは難しいでしょう。このため、スキルの必要な白アスパラ収穫作業よりも、洗浄や運搬等を担当するなど、できる仕事を担当してもらうことが多いようです。
また、農作業の月収は1500ユーロ(手取り1240ユーロ)、時給13ユーロ(手取り7~8ユーロ)です。都市部の失業者が受け取る報酬としては少なすぎ、交渉が決裂する場合もあります。
一方、大学が休校になり時間ができた、農学部の学生が参加する場合があり、これはまさに適材適所と言えるでしょう。農家としては将来の仲間を育てることになり、学生にとっては、実地研修の単位となります。
このほかに、庭園業を営む人や、農家に転職したい人など、農業と比較的近い業種の人が歓迎されているようです。また、難民申請者は、手続きが完了すればすぐにでも働き始めることができるため、すでに収穫作業に従事し、戦力になってきています。