政府が失業者を農家にマッチング
一方、休業と外出制限により、オーストリアの失業者は激増しました。政府は「クルツアルバイト」と呼ばれる短時間労働制度に多額の特別予算を充て、労働時間を最大90%削減し、8割の給料を保証することで、失業対策と倒産防止に努めました。
政府の必死の対策にもかかわらず、特に観光業、建設業、飲食業の臨時雇用者や芸術関係者は大きな痛手を受け、60万人の失業者が出ています(4月14日現在)。これは戦後の1946年に次ぐ数値で、早急な失業対策が必要とされています。
失業者が大量に発生する一方、人手が足りない分野がある。政府は早い時点でこのギャップに気づき、労働力マッチングのための公的オンラインプラットフォームを立ち上げました。労働時間、期間、農作業経験等を記入すると、農家の方からコンタクトできる仕組みになっています。
このサービスには400以上の農家が申し込み、直近で3500人の労働力が必要とされていることがわかりました。また、今後数カ月の間に、野菜と果物の収穫に5000人、食肉産業で9000人の人手不足が発生すると予測されています。仕事内容は、収穫、洗浄、食品加工、梱包、運搬など。すぐに7000人以上の希望者が申し込み、マッチングが行われました。
申込者に多かったのは、建設業従事者、ウェイター、料理人、店舗販売員、芸術家など、まさに失業者が多い職種です。こうして、国内の余った労働力を、人手の足りない分野へと振り分けることに成功しています。
チャーター機で外国人労働者を連れて来たドイツ
ドイツでは、休業中のマクドナルドの店員が、ディスカウントスーパーALDIのスタッフとして働くなど、人事パートナーシップによる余剰労働力と人手不足のマッチングが行われています。しかし、給料や保険、個人情報の点で一筋縄ではいかない場合もあり、労使ともに協議が重ねられています。
また、オーストリアとは異なり、ドイツでは白アスパラ収穫の労働力不足対策として、ポーランドやルーマニアからの熟練外国人労働者を、チャーター機でまとめて連れてくる策に出ました。これは、ドイツはオーストリアほど観光業に依存していないため、失業者の割合が少なく、失業対策がそこまで急務でないことも原因と考えられます。
このように、同じような問題を抱える国でも、対応は異なる場合もあり、各国知恵を絞っている様子がうかがい知れます。