直接話し合うことでわかる、部下の大きな可能性
「技術に触れることが大好きで、日々仕事を楽しんでいただけ。だから、管理職を打診されたときは正直とても驚きました。でも、チャレンジしてみないことには始まらないと、覚悟を決めることにしたんです」
システムエンジニアとしてものづくりに携わってきた田中まりさん。新設の研究開発部門に異動になった翌年、次長に(課長相当職)昇格。若手エンジニアチームを任された。
「最先端技術を追う部署なので、知識を常に最新にアップデートしておくことが一番大切。そうでなければ、顧客はもちろんチームメンバーに説得力のあるアドバイスができないし、ましてや彼らの能力をどう生かすべきか判断できませんから」
部下は技術力のある個性派揃い。彼らのこんなことをやってみたいという思いを実現し、会社の実益につなげていくのが田中さんの役割だ。しかし、入れ替わりもあるメンバーの能力をどう生かせばいいのか悩んでいたとき、田中さんが助けられたというのが、社内メンバーで行われる“女性課長ランチミーティング”だった。
「そこで、個人面談の際に振り返りシートを用意してもらい、共有するといいとアドバイスを受けたんです」
部下の思いをしっかり聞き取りたいと考え、1人1時間ほどの時間を確保。チームメンバーは11人。課長業務を行いながらの時間確保は大変だが、仕事を円滑にまわすために必要な時間だと割り切り、全員と面談。
「彼らのことを深く知らないままでは何一つ前に進めない。メンバーが替わるたび、最適なやり方を考えるようにしています。時間の確保は大変ですが、メンバーを適材適所に振る手助けになっています」
能力のある若手メンバーをどう育て、戦力につなげていくか、チーム全体として新しい技術をどう吸収していくかを考えていると、田中さんは家庭と同じように、会社でも子育てをしている心持ちになるという。
「管理職に就いて2年半。最初は、みんなに認められるために気張っていましたが、着任して1年が過ぎたころ、私は『付いてこい!』的なリーダーではないので、自分なりの軸を持ったうえで、その時々のメンバーに必要とされる自分でいるのがいちばんだと思うように。だから、私自身の業務内容をオープンにし、いつでも相談できる相手でいるよう心掛けています。メンバーの中にはグイグイ引っ張ってほしいと思う人もいるかもしれませんが、私は私らしいやり方でいいのだと思っています」
構成=江藤誌惠 撮影=大槻純一
1999年入社後、営業職に。2011年、1人目の妊娠を機に営業支援グループに異動。2度の産休・育休を経て、16年、営業支援グループ リーダー(非役職)に。19年、マネージャー就任。
2005年入社後、システム開発・保守部門に配属。10年、半年間の産休・育休後、同部署に復職。16年、現所属部署のフロンティアテクノロジー部に異動。翌年、同部次長に就任。