お互いの人となりを知れば、意見交換は活発になる
入社以来、営業に携わってきた福嶋えり奈さんが営業支援グループに異動したのは入社13年目のこと。妊娠を機に営業を支援する側に回ったのだった。そして、その8年後、マネージャー(課長相当職)に昇格。
「辞令を受け、やりがいがありそうだとワクワクしました。以前の部署の直属の女性上司が、部下の意見に耳を傾け、部下をよく見てくれる人でした。その環境がとても働きやすかったので、彼女のようなマネージャーになりたいと考えました」
そうは思っても思うようにはならないもの。当初、初めて顔を合わせる部下に囲まれ、どう振る舞えばいいのかわからずにいた。しかし、毎日顔を合わせているのだから、仕事を楽しもうと気持ちを切り替え、コミュニケーションを深めるうちにお互いの気持ちが通じ合うように。
「約30人の部下とともに、大勢の営業担当者を支援しています。皆の意見を聞き、各部署間を調整するのですが、あちらを立てればこちらが立たず……よりよい着地点を探す毎日。メール連絡が多い時代ですが、私自身、営業出身なので顔を合わせて話をするのが当たり前。直接話したほうが意思疎通も早いので、自分のやり方でやらせてもらっています」
足を使って情報を取りにいく姿勢が功を奏し、対話が人と人との調和を生み、結果につながっていった。
「以前から行われている週1のリーダーミーティングも、メンバー全員が忙しいため、ミーティングの場が前向きに活用されていませんでした。だから、ミーティングでは情報の共有はもちろんのこと、テーマを設定して意見を出してもらうなど、意見交換しやすい空気づくりを心掛け、メンバーのモチベーションが上がるように工夫を凝らしていきました。お互いの考え方や思いを知るにつれ、それぞれの人となりが理解できるようになると、部内で自由に意見が言えるようになっていくんですね。今では、ミーティングが意見交換の重要な場になっています」
福嶋さんは、朝夕の子どもの送迎があるため、定時内で仕事を終える必要がある。そのため、社内のちょっとした会話にも耳を傾けることで、職場の問題点や部下の悩みにいち早く気づけるようにしているそう。
「部下全員をつぶさに見ていくのは難しいので、何でも言ってきてもらいたいのです。私の今の状況では就業時間外に話を聞くことが難しいので、私から積極的に声を掛け、部下が話しやすい雰囲気をつくるように心掛けています」
直接話し合うことでわかる、部下の大きな可能性
「技術に触れることが大好きで、日々仕事を楽しんでいただけ。だから、管理職を打診されたときは正直とても驚きました。でも、チャレンジしてみないことには始まらないと、覚悟を決めることにしたんです」
システムエンジニアとしてものづくりに携わってきた田中まりさん。新設の研究開発部門に異動になった翌年、次長に(課長相当職)昇格。若手エンジニアチームを任された。
「最先端技術を追う部署なので、知識を常に最新にアップデートしておくことが一番大切。そうでなければ、顧客はもちろんチームメンバーに説得力のあるアドバイスができないし、ましてや彼らの能力をどう生かすべきか判断できませんから」
部下は技術力のある個性派揃い。彼らのこんなことをやってみたいという思いを実現し、会社の実益につなげていくのが田中さんの役割だ。しかし、入れ替わりもあるメンバーの能力をどう生かせばいいのか悩んでいたとき、田中さんが助けられたというのが、社内メンバーで行われる“女性課長ランチミーティング”だった。
「そこで、個人面談の際に振り返りシートを用意してもらい、共有するといいとアドバイスを受けたんです」
部下の思いをしっかり聞き取りたいと考え、1人1時間ほどの時間を確保。チームメンバーは11人。課長業務を行いながらの時間確保は大変だが、仕事を円滑にまわすために必要な時間だと割り切り、全員と面談。
「彼らのことを深く知らないままでは何一つ前に進めない。メンバーが替わるたび、最適なやり方を考えるようにしています。時間の確保は大変ですが、メンバーを適材適所に振る手助けになっています」
能力のある若手メンバーをどう育て、戦力につなげていくか、チーム全体として新しい技術をどう吸収していくかを考えていると、田中さんは家庭と同じように、会社でも子育てをしている心持ちになるという。
「管理職に就いて2年半。最初は、みんなに認められるために気張っていましたが、着任して1年が過ぎたころ、私は『付いてこい!』的なリーダーではないので、自分なりの軸を持ったうえで、その時々のメンバーに必要とされる自分でいるのがいちばんだと思うように。だから、私自身の業務内容をオープンにし、いつでも相談できる相手でいるよう心掛けています。メンバーの中にはグイグイ引っ張ってほしいと思う人もいるかもしれませんが、私は私らしいやり方でいいのだと思っています」