プライオリティの変化が良いチームづくりに生きていく
6年余りの海外赴任を終えて、2016年に帰国。次のキャリアを考えたとき、「デジタルマーケティング」に関わってみたいという思いがあった。従来の店頭やカタログなどの媒体に代わり、ソーシャルメディアを使ったデジタル一眼カメラα(Alpha)などのデジタルマーケティングを担当。また新たな分野へのチャレンジである。
チーム作りや仕事自体もまず形にするところから始まり、川本さんにとってもまさにトライの連続だ。なかでも冷汗ものだったのは、大規模なカメライベントで大任を命じられたこと。全米のプロ・アメリカンフットボール・リーグ(NFL)専属のフォトグラファーの講演で同時通訳を任され、「緊張のあまり失神しそうだった」と苦笑する。
どんな逆境もチャレンジと受けとめ、持ち前の度胸と向上心で乗り切ってきた川本さん。海外赴任で得た経験は日本での働き方にも活かされているようだ。
「プライオリティがどんどん変化していることを感じます。健康や家族のこと、チームがハッピーなのかどうか、自分も年齢を経るほどに大事にすることが変わっている。仕事は楽しいから没頭してやっていたけれど、幸せと思えることが多くなっている気がします」
自分のライフスタイルも変わっていく。週末は好きな海岸へ出かけ、ビーチスポーツのフレスコボールにはまっている。海の写真を撮るのも趣味になった。さらに今はパートナーとの関係も大切にするようになった。彼は海外在住で遠距離での生活が続くため、プライベートで会える時間を設けられるよう帰社時間を調整することも。互いのキャリアを尊重しながら、二人にとってより良い関係を模索しているという。
かつては猪突猛進で仕事を第一に考えていたけれど、自分の世界も広がったことで、マネージャーとして部下に求めるものも変わってきた。人それぞれの働き方があって、そのなかで最良のパフォーマンスを出せるようにサポートしたいと思う。そして女性たちに届けたいのはこんなメッセージだ。
「何かチャレンジできる機会を与えられたら、自分は無理と躊躇したり、遠慮はしない方がいい。周りの人が凄く見えてしまい、会議に行けば男性ばかりという状況も多いけれど、ポジションが“人”をつくると思うのです」
失敗や逆境が待ち受けていても、その先に広がる世界がある。だからこそ「チャレンジしてほしい!」と川本さんはエールを送る。
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。