「参加した人=仲間」という謎ルール

今後、この流れが逆行することはおそらくないと思います。そう遠くない将来、家庭を顧みない働き方も、ゴルフや飲みニケーションも、キャリアアップに必須ではなくなるでしょう。

これらを併せて考えると、楽しむためならともかく、無理をしてまで今目の前にいるおじさんたちの仲間になる必要はないと言えます。そもそも、仲間のつくり方や扱い方は彼らの独自ルールのようなもの。今そこから外れたからといって、先々のキャリアが絶たれるようなことは考えにくいのです。

それにしても、おじさんたちの仲間意識はどこから来るのでしょうか。チームで仕事をするなら団結は大切だと思いますが、一緒にゴルフをしたり酒を飲んだりすることでなぜ一致団結できるのか。

私が思うに、彼らにとっては「何も考えずに済む場」が必要なのかもしれません。立場や個性、性別、家庭環境など、それぞれの違いをあまり深く考えてしまうと、団結できないと思っている可能性があります。ゴルフや飲み会は、それらを忘れていい場だと捉えているのではないでしょうか。

本来は違いを理解した上で、それを超えて団結できるのが理想的だと思います。しかし現状は、深く考えずに集まって、たまたま集まった人だけを「仲間」と認定しているように見えます。

上よりも同世代や若い世代との関係を大切に

これも、ともに楽しむための仲間ということならいいのですが、昇進昇格にも影響を与えるようであれば、早々に意識を変えてもらう必要があります。

繰り返しになりますが、皆さんのキャリアはあと数十年もあります。キャリアを長いスパンで考えれば、今から上の世代の考え方になじもうとする必要はありません。それよりも、同世代や下の世代との関係づくりに力を入れるほうが有意義です。

そして、自分が上司の立場になった時には、部下が「ゴルフや飲みニケーションに参加すべきか」と悩まないようにしてあげてください。確かに、同じ体験をして共通の話題を持てば人間関係は深まります。

しかし、それとキャリアアップは別の話。互いに無理のない範囲でコミュニケーションを深め、人間関係を築いていく工夫をしていただければと思います。

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田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。