半年かけて仕上がり、サイズはぴったりだが……

そして、年明け2020年の2月某日、待ちに待った仕上がりの連絡が入る。うきうきと来店すると、オーダー通りのスクエアトゥのパンプスが!とてもシンプルだけど、シェイプがとても美しい。ストラップは、履いてからちょうどいい場所に穴をあけてくれるという。

木下さん

出来上がったスクエアトゥのパンプス。ストラップの穴は履いてからあけてくれる。

早速、足を入れて立ってみると、ヒールの安定感もばっちりでぱっと見はぴったり。ただ、仮靴の時より、本番は皮のあたりがやや固くてつま先がきつい気がした。そのまま店内をぐるぐると歩いてみる。

木下さん

歩いてみると、仮靴のときより皮のあたりがややきつい感覚があった。

「右側の方が踵に隙間がありますね。調整しましょう」と星野さん。人間の足は左右差があるので、そこまで細かく見て調整をしてもらえるのもフルオーダーならでは。仮靴と同じく、つま先はどの指がどのように痛いか細かく聞かれた。今回は先をカットするわけにはいかないので、具体的にどこがどうと答えるのはかなり難しい。実際に歩きながらつま先に全神経を集中して、どの指のどの辺がきついのか一生懸命考えて星野さんに伝えてみる。

この靴の細さでもまだ足がやや前に滑っているため、まずは中敷きを入れてもらうことになった。

中敷きを入れてみる

滑り防止のために、中敷きを入れてみるも、さらにきつい感覚に……。

「パンプスは実際の足よりも細く作るのが原則です。通常はこれくらいのタイトさでつくるのですが、そもそもの足がものすごく薄いので痛く感じるかもしれませんね」

星野さんが言う通り、中敷きを入れて歩いてみたところ、最初に履いたときにきつく感じたつま先がさらにきつく感じる。

「では中敷きは外しましょう。つま先を少し柔らかくなるように調整します。とりあえず履いているうちにある程度、皮がなじんできますので、そのときに何かあればまた調整します」

靴の調整

道具を使ってつま先を柔らかくしてもらう。この作業だけでずいぶん違った感覚に。

足の幅が細いだけでなく、逆に広すぎる人など、いろいろな悩みを持つ人が来店すると星野さんは語るが、一般に足が細かったり薄かったりする人の方が敏感なので痛いと感じやすく、セオリー通りタイトにつくるのがとても難しいのだという。

「だからこそ、つくるときにできるだけ話し合い、コミュニケーションを取っていただくことが大事なんです。サイズや見た目がぴったり合っていても感覚的につらい場合は、無理せずに言っていただければ調整します」