「日本人の男性だけ」のチームではもう勝てない

昔、プロ野球の読売ジャイアンツは、オーナーの方針で「日本人の男だけでやる」という時代がありました。それで強かった時代は、日本人選手だけでもよかった。しかし今、そんなことを言って外国人選手を取らないでいたら負けてしまいます。負けたら観客が入りませんから商売になりません。

昨年(19年)ワールドカップで盛り上がったラグビーも、日本チームにはたくさん外国人選手が入っていました。それで強くなってベスト8に入ったのですから誰も文句は言いません。一方で、もしも「日本人オンリー」にしていたら代表チームに入れたのに、外国人選手が入ったがために外れてしまった日本人選手はいるわけです。日本企業のダイバーシティ推進の足をひっぱる男性は、そこで代表にしがみつこうとする選手のようなものです。そのせいでチームが弱くなっても「それでもいい」としがみつくのは、スポーツの世界でもビジネスの世界でも許されるべきことではありません。

例えばアメリカの会社のCEOを見ると、女性も外国人もいろいろいます。性別も国籍も、誰も気にしません。これは優秀な人を入れないと勝てないからであって、そのことをよく理解しています。

僕が何のためにダイバーシティを推進してきたかというと、推進しないと会社が成長しないからです。ジョンソン・エンド・ジョンソンにいた時も、カルビーにいた時も、会社の業績は大きく伸びましたが、その大きな理由の一つがダイバーシティです。

トヨタの次期社長を女性にすれば、日本は変わる

日本のダイバーシティを変えるうえで、一番問題なのは大会社です。ここが変わらないと日本は変わりません。カルビーくらいの規模の会社が変わっただけではダメなのです。

例えばトヨタ自動車くらい影響力があり、典型的な日本の大会社が変わらないと。それも、「常務が1人女性になりました」という程度でお茶を濁すくらいでは足りません。トヨタ自動車の次期社長に日本人女性がなる。それくらいやれば、日本企業は横並び意識が強いので、変わってきます。

GM(ゼネラルモーターズ)の社長は今や女性です。かつて世界の自動車市場で最大のトップだったGMにできているんですから、トヨタ自動車にできないはずはありません。

日本のダイバーシティの推進役になるのは、日産自動車でもいいと思います。僕はうまくいっていない会社を再生するのは好きですから、日産自動車のトップなら、声がかかればやりますよ(笑)。勿論、そんなことはあり得ませんが。日産自動車のトップを女性にしたら会社は急回復するかもしれませんよ。

構成=大井明子

松本 晃(まつもと・あきら)
ラディクールジャパン代表取締役会長CEO

1947年、京都市生まれ。京都大学大学院修了。伊藤忠商事、ジョンソン・エンド・ジョンソン社長、最高顧問などを経て2009年カルビー会長兼CEO、18年RIZAPグループ代表取締役COOを経て19年よりラディクールジャパン代表取締役会長CEO。