“彼ら”が現状を変えようとしない理由3つ

意思決定をする力を持つ“彼ら”はなぜ、日本のダイバーシティを本気で変える気にならないのか。大きな理由は3つあります。

1つ目の理由は、女性を登用したら男が損をするからです。例えば今、男性の部長が10人いるとして、「女性を部長にする」からといって部長のポストが20になったりはしません。女性を部長にすると、その分、部長のポストを取られる男性が出てきます。人間、損をすることに反対するのは当たり前です。

2つ目は、いくら表面上「女性活躍を推進します」と言っていても、実は優先順位は低いままだからです。そもそも、あまり重要だと思っていないわけです。安倍晋三首相も、女性活躍を謳ってはいるけれど、実際のところ、多分やるべきことの優先順位が1位や2位にはなっておられないでしょう。憲法改正や経済政策に比べるとずーっと下。もちろん、全くやっていないわけではないですが、やっぱり後回しなんです。

3つ目は、“異物”が入ると不愉快だからです。男性10人で話しているところに女性が1人入ると、男性の方は、何となく自由にものが言えなくなってしまいます。特に猥談なんてそうですが、猥談でなくてもそう。逆も同じです。女性ばかりのところに男性が1人でも入ると、女性たちは話しにくくなるでしょう。

このままでは普通以下の国になる

けれども、もはやそんな理由でダイバーシティの推進を滞らせている場合ではなくなっています。

1990年代までは、「日本人」「男性」「シニア」「一流大学卒」の人たちだけで世の中を回していて、うまくいっていました。しかしその後はまったくうまくいっていない。平成の30年間は日本が凋落した30年で、まだ落ち続けています。昭和の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代から「普通の国」になり、今や「普通以下の国」になろうとしています。

90年頃に世界のパラダイムががらりと変わったのに、日本だけが変われなかったのです。しかも、パラダイムが変わったことにすら気付かない。原因のすべてとは言いませんが、ダイバーシティを進められなかったことが、この凋落の大きな理由でしょう。

日本が相変わらず「日本人」「男性」「シニア」「一流大学卒」で回している間、海外は必死でダイバーシティを推進して成長してきました。ダイバーシティ推進をやらなくても成長できるのなら、やらなくてもいいかもしれません。でも、やらないと成長できないんです。人口の半分は女性ですから、女性を活用しないでうまくいくわけがありません。女性かどうか、障がいがあるかどうか、LGBTかどうか、そんなことはビジネスにおいて何の関係もない。企業にとっては、成果を挙げてくれれば誰でもいいはずなんです。