リモートワークを頑なに拒むケースも

目ざましい技術革新とグローバル化が両輪で急加速する昨今、もはやトップが答えを持ち得ない、組織の中にも答えがない時代である。そのような時代にあって、旧来製造業型の仕事のやり方はもはやリスクである。おのおのの領域のプロが、組織の壁を越えて社内外の他者とコラボレーションをしていかなければ問題解決も新たな価値創造もおこらない。

部署ごと、職種ごと、個人ごとに「どんな仕事のやり方がもっとも価値を発揮できるか」を真剣に論じ、横並びを脱していかなければ主体的な働き方などいつまでたっても夢物語だ。

実際にこうした硬直化した風土の職場で働き方改革を進めようとしても、一部の人の「自宅では落ち着いて仕事ができない」「家にいたくない」などの反発により、リモートワークが定着しない事例や、「製造現場で働く人はリモートワークなんてできない。不公平だ」といった理由でリモートワーク導入が見送られるケースも珍しくない。さらには、ITツールを使いこなせない、使おうともせずリモートワークを頑なに拒むというケースもいまだに見られる。

不公平でも第一歩を踏み出すべき

「やれる人はやる」

このくらいの割り切りで、リモートワークできる人はどんどんやれるようにするべきだ。

横並び主義での「リモートワークNG」は、リモートでも成果を出せる、セルフマネジメントができる人材に対して大変失礼でもある。組織や仕事に対する帰属意識(エンゲージメント)も熱量も下がる。

残念ながら、製造業や自動車産業の統制モデルはもはや過去の成功体験である。高度経済成長を支えてくれたことに最大限の感謝を示しつつ、そろそろ見直すべき時にきている。

今回のような状況をきっかけに、逸脱や例外を認めることから始めたい。例えば

・リモートワーク可能な部署や職種はリモートワークに切り替える
・フレックス勤務を部分的にでも取り入れる

など、たとえ不公平であっても、制度や働き方のルールを弾力的に運用する第一歩を踏み出してほしい。これができるかどうかが、企業間における緊急対応力の差につながっていくのだ。

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沢渡 あまね(さわたり・あまね)
作家/ワークスタイル&組織開発専門家

1975年生まれ。あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/浜松ワークスタイルLab所長/国内大手企業人事部門顧問ほか。「組織変革Lab」主宰、DX白書2023有識者委員など。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『問題地図』シリーズ(技術評論社)をはじめ、『新時代を生き抜く越境思考』(同社)、『職場の科学』(文藝春秋)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『仕事は職場が9割 働くことがラクになる20のヒント』(扶桑社)など著書多数。