大男でも500mLは多すぎるんだから……

「そうか。こんな大男の僕ですら、500mLのペットボトルを余らせてしまう。だったら、世の女性たちも同じように、あるいは僕以上に、罪悪感を感じつつ“残った分”を捨てているシーンがあるのでは?」

朝は1日の準備に追われ、何かと忙しいはず。ですが小林さんは、朝のそのひらめきを無駄にはしませんでした。

その日一日、東京・山手線などを使った移動中に、あるいは駅の自動販売機の前で、おもに女性たちがどのようなシーンで飲料を買い、飲み、持ち歩くペットボトルやステンレスボトルがどれぐらい減っていそうかを、ひたすら「観察(マーケティングで言う、エスノグラフィ)」し続けたのです。

商談の合間の街歩きでも、犬を散歩させたり、ウォーキングしたりするシニア女性が目に入ったとのこと。

「散歩もウォーキングも、せいぜい30分~1時間程度でしょう。彼女たちにとっては、通勤や散歩、ウォーキングなどの際に持ち歩きやすい、つまりバッグやポケットにスッと収まるサイズ感やデザインのほうが、メリットが大きいと確信しました」(小林さん)

誰もが気づきそうで気づかなかった盲点

そこからは、頭の中でどんどん発想を膨らませたと言います。

――東京の通勤時間は、平均で約1時間。最近は、会社など勤務先にウォーターサーバーやコーヒーマシンがあるケースも多い。だとすれば、せいぜい片道(1時間程度)に飲む分の飲料が入れば、帰りの分はどこかで「注ぎ足し」すれば良いのでは?――
――僕でさえ、一度に飲みきれるサイズは、「オロナミンC」(大塚製薬)や「リポビタンD」(大正製薬)程度。ステンレスボトルも、これと同じぐらいの容量(約120mL)で十分なのでは?――

さらに翌日、小林さんは1枚のラフスケッチを書き上げました。その時点で、既にラフには「Pocket+(プラス)Little+Botle=POKETLE」のネーミングが。

同時に、ポケトルの核となる次のコンセプト、すなわち「ポケットに入る日本最小サイズで、必要な分だけ注ぎ足しでき、通勤や散歩の際に便利な商品」であることも、きちんと記されていました。小林さんの「朝の気づき」から、わずか2日後のことです。

社内の反対意見を克服した3つのポイント

もしかすると、こう考える人もいるかもしれません。「小林さんは、自身で起業した会社の代表だから、その企画をすぐ実行に移せたんでしょう」と。

ですがご多分に漏れず、彼の目の前にも、強固な“壁”が立ちふさがっていました。企画を耳にした多くの社員は、「まぁ、一部のニッチな人たちは欲しがるかもしれませんが」や、「この業界(ステンレスボトル)の大手がまだ販売していないってことは、そもそもニーズがないんじゃないですか?」と、一様に後ろ向きだったと言います。

ではどうやって、小林さんはその空気を変えたのか。ポイントはおもに3つ、すなわち「目標期限」の打ち出しと「販売現場」の巻き込み、そして「枠の外に出よう」という前向きな考え方です。

目標期限は、半年後に迫った18年9月開催の「東京インターナショナル・ギフト・ショー(2018秋)」に設定しました。なんとしても、ここにサンプル品を出展する。なぜならポケトルは、販売現場のバイヤーたちに実物を手に取ってもらえてはじめて、気に入ってもらえると確信していたからです。

社員たちは半信半疑ながら、半年後に向け、準備に奔走することになりました。