教育旅行での営業担当、オセアニア支配人室への派遣を経て、広報室長、法人営業の個所長などのキャリアを積み、現在はJTBグループの風土改革を一手に担う髙﨑邦子さん。女性リーダーとして躍進を遂げた今も、人としての原点や、それぞれの部署で得た経験やモットーは、常に胸に刻んでいると言います。自分を成長させながら部下も育てる、その秘訣はどこにあるのでしょうか。

※本稿は、2019年10月3日、しなやかに情熱を持って働く女性たちのための交流会「PRESIDENT WOMAN Salon」の第7弾「株式会社JTB執行役員、髙﨑邦子さんを迎えて」の内容から構成しています

教育旅行営業時代の感動が今も続く原点に

JTB 人事部 執行役員 働き方改革・ダイバーシティ推進担当 髙﨑邦子さん(撮影=小林久井、以下すべて同じ)

私は1986年、男女雇用機会均等法の第1期生として入社しました。配属は団体旅行大阪支店で、主に修学旅行担当として、多い年は年間120日も添乗に出ていました。

今でも忘れられないのは、養護学校の修学旅行を担当した時のこと。私は生徒さんにすてきな思い出をつくって欲しいと思い、ホテルの宴会場でテーブルマナーを学ぶ食事会を組み込みました。

皆、最初は緊張の面持ちでしたが、食事が始まり、自分にも教わったマナー通りにできるのだとわかってくると、段々とうれしそうな、そして誇らしそうな表情に変わっていきました。その様子だけでも充分にうれしかったのですが、帰りの車内で、ある生徒さんが「旅行がこんなに楽しいなんて初めて知りました。4月から就職しますが、旅行に行くことを目標に頑張って働きます。」と言ってくれたのです。

この時は、この仕事を選んでよかったと心から思いました。この時の生徒さん達の笑顔は、今も私の心の原点になっています。JTBのブランドスローガンは「感動のそばに、いつも。」ですが、これは常にお客様の感動のそばにあり続けたいという、私たちJTB社員一人ひとりにとっても大きな意味のある言葉なのです。

入社4年目にはグループリーダーになり、特に女性の部下たちに対しては未然にリスクを取り除くことに心を砕きました。当時の営業業務には、女性であるということだけで直面せざるを得ない苦労が多かったのです。私は、男性社会の壁や対人関係で起こりがちなトラブルといったリスクをひとつひとつ潰し、「これで部下も安心して働けるはず」と安堵して、シドニーへ赴任しました。