いろんな女性管理職像があっていい
「男性と同じようなレベルでのやり方やリソース(時間)で進めなければいけないと思い込んでいたのです。自分で自分の管理職としてのハードルを上げてしまっていたことに初めて気づきました。男性と同じようにではなく、『女性としてありのままで働ける人がこれからは必要なのだ。いろんな女性管理職像があっていいのだ』と気持ちが整理でき、肩の荷が下りた気がしました」
さらに彼女に確信を与えたのは、当時の男性上司たちのあり方だった。
「普段は仕事を任せてくれて口を細かく出すことはないのですが、大事なときにはちゃんと寄り添い、味方になってくれました。私が知らない分野の業務に困っているときに本や考え方、人を紹介してくれる人もいました。管理職とはいえ、常に気張る必要はなく、最後にきちんといる人になればいいのだと思えました」
そこから明石さんの意識は大きく変わった。子育てと仕事の二足のわらじを履くことをポジティブに捉えられるようになった。完璧はめざさず、やることよりもやらないことを決める。週末は部下にメールや連絡をしない、メンバーがいないところで悪く言わない、アドバイスでは自分の価値観を押し付けない、メンバーが困っているときには、たとえ解決してあげられなくても逃げない。自分の中に最低限のルールを決めたら気が楽になった。
エイジョカレッジを契機に、社内でも女性たちのキャリアデザインを考えるワークショップに参画。回を重ねるうちに女性たち自身にキャリアパスへのバイアス(先入観)があることに気づいた。無理だと諦めずに、新しい業務ややりたいことに挑戦できるよう背中を押してあげる機会を提供している。
「多様な選択肢があっていい。私たちの世代はちょうどその過渡期で、後輩たちにバトンを渡す役割だと思っています。これからきっとどんどん可能性は広がっていく。だからこそ、後輩の女性たちにもライフを自分で選ぶように、キャリアも自分でデザインしてもらいたいですね」
2007年から育児や介護中の人を対象に、試験的に一部の部署を対象に導入開始。08年からは事由制限を撤廃。10年8月からは制度を拡充。現在では、週の半分以上の時間で出社すればよく、10分単位で利用可能。セキュリティ確保ができれば、自宅外での利用もOK。
時短勤務者減への取り組み
保育園入園ができない場合、最長7カ月まではシッター代を会社が一定額補助。復帰後も、フルフレックスタイム制の採用で時短勤務者は大きく減った。子どもの急病時や急な残業などにはシッター代を会社が一定額補助。看護や行事参加には年5日の休暇が取得できる。
早期地方勤務で経験蓄積
男性や年次を積んだ社員が多かった地方転勤も、男女関係なく入社後早い段階で経験させる方針に転換。結婚や出産などのライフイベントが訪れる年代になる前に地方や営業の経験を積むことで、その後の選択肢も増え、止まらないキャリアパスを可能にした。
撮影=田子芙蓉