女性も若手も自ら意思表示。早くから営業や転勤を経験

「これまでの日本企業では、ある程度の経験を積んでから地方や新規事業などを経験する順番が回ってきましたが、ライフイベントで忙しくなる時期と重なったり、下積みが長すぎて意欲が落ちてしまったりという問題がありました。そこで、これまでは男性が中心だった営業職や地方への転勤も、入社後早い時期に積極的に女性や若い世代も経験できるようにしたことで、ライフイベントと重なる前にある程度の経験を積めるようになりました。新規事業などは公募制にし、営業や大きな組織にも早くから異動可能です。現在では、営業拠点で女性の支店長も出ています」

社内の公募制度も、新規商品開発から海外グループ企業への1年間の研修まで幅広い機会が提供されている。応募には上司の許可は必要なく、本人の判断で行える。新しいことにチャレンジしていく女性や若手が会社に新しい風を吹かせ、良い循環をもたらしている。

「ほかにも、海外グループ会社の女性管理職(部長以上)のネットワークづくり、外部への学びにも積極的な参加を促しています。大事なのは、キャリアパスを止めさせないこと。特に女性はライフイベントが多く起こりうるからこそ、可能性を諦めないで進める支援が重要ですね」

5年後の幸せを求め転職。管理職として大きな節目に

営業担当部長として主にeコマースを担当する明石知恵さんが、サントリーに転職したのは14年。前社は外資系企業で、2人の子どもを出産して復帰後に昇進。営業の管理職としてバリバリ活躍していた。しかし、初めての管理職、経験のないeコマース担当、そして管理職になったことで英語での社内プレゼンや業務が増えてプレッシャーがのしかかり、幼い子どもたちと過ごす時間もないまま昼夜も休日も仕事に走り回る日々になっていた。

「仕事は好きだし、社内の後輩女性たちの手本でありたいという責任感もありましたが、そんな生活に疑問を感じていました。転職は非常に悩みましたが、5年後に幸せでいたいと考えて思い切りました」

ちょうど女性の営業職を募集していたサントリーに縁があり、入社。転職して2年経験を積んだ後に、再びマネジャーに昇進した。過去の経験から抵抗がなかったといえば嘘になる。そんなとき、異業種の営業女性が集まって働き方を考える「エイジョカレッジ」に参加し、ほかの女性たちの仕事への意識を聞けたことが大きな転機となった。