少しでも違和感があれば、まずは相談窓口へ

もう一点、セクハラに関して知っておきたいのは、加害者個人だけでなく、使用者である会社に対しても、損害賠償と慰謝料を請求できるということ。なぜなら会社にはセクハラのない環境を用意しなければいけない「使用者責任」というものがあるからです。そういう意味ではセクハラがあった場合、社内相談窓口を利用するのは当然だともいえるでしょう。

セクハラを受けた女性のなかには、「自分にもスキがあったかもしれない」「何か誤解されるような言動をしてしまったのかもしれない」と自分を責める人もいます。

しかし、仮に誤解させるような言動があったとしても、そのあとどういう行為があったかがすべてであり、相談をためらう必要はありません。仮に「一緒にホテルの部屋に入った」というような行為があった場合は、その分、慰謝料をマイナスにされることもありますが、相談の段階ではそこまで厳密に考える必要はないでしょう。

もともと女性はセクハラの被害者になりやすいという意味では、弱い立場にあります。窓口に相談することは、そのギャップを埋めることにつながります。それを後ろめたく思う必要はないのです。

そもそもセクハラは他人に相談しにくいものですし、なかには「私のケースはセクハラと言えるのだろうか」と悩んでいる人もいるかもしれません。確かに何をもってセクハラとするのかは微妙な問題ですが、「イヤだなあ」と違和感をもった程度で相談窓口に行っても、まったく問題はありません。先述したような点に注意しながら相談窓口は積極的に利用すべきだと思います。

構成=長山 清子 写真=iStock.com

齋藤 健博(さいとう・たけひろ)
弁護士

2010年慶應義塾大学総合政策学部を経て15年慶應義塾大学法科大学院修了。同年司法試験合格。16年弁護士登録、虎ノ門法律経済事務所所属。18年慶應義塾大学法科大学院助教。2019年銀座さいとう法律事務所開設。離婚や不倫など男女問題に強い。