窓口に相談するときの注意点

たとえばある有名な大企業では、女性社員が相談窓口でセクハラの事実を訴え、裁判を起こすと言ったとたん、「それなら、この会社にいないほうがいいよ」と退職をすすめられました。その女性はまだ22歳と若かったこともあり、「そんなものかな」と思って退職を承諾してしまったのです。

あるいは窓口に相談したにもかかわらず、企業側が何も手を打たないこともあります。通常、相談後は事実関係の調査に移りますから、先方からのヒアリングが必ずあります。何の動きもない場合は窓口が機能していない証拠ですから、弁護士に相談するなどして本格的に争うことも検討することになります。相談窓口を訪れたにもかかわらず、会社が具体的に動かないこと自体、大きな問題だからです。

なぜこのようなことが起こるかといえば、セクハラはほとんどの場合、何らかの役職にある男性社員と、それより立場が下の女性社員のあいだに起こるものだからでしょう。会社側から見て女性と男性ではどちらが大事な社員かといえば、男性である場合がほとんどなのです。

したがって会社は男性を守るために女性の訴えを退けるだけでなく、逆に女性を退職に追い込んだり異動させたりするなど女性に不利な処分を下すケースも珍しくありませんでした。

しかし今回の法改正では、セクハラを相談したことで相談者が不利益を被ることを強く禁止しています。今後はこのようなことも減り、相談窓口が利用しやすくなるはずです。

日記やLINEなどで経緯を残し、上司にも相談

もしセクハラを受けた場合、重要なのは、「証拠」を残すことです。加害者がセクハラの事実をすんなり認めることはまずありませんし、言い分は食い違うものだと思っていたほうがいいでしょう。そうなったときのために、証拠はあったほうが望ましいのです。したがって、心理的にはすぐ削除したくなると思いますが、相手からのメールやLINEのスクショなどは必ずとっておきましょう。自分で書いた日記やメモでもOKです。

また、後日、「上司に相談した」という事実を主張するためにも、直属の上司に相談しておくことも必要です。

しかし証拠がないからといって、相談窓口に相談できないと考える必要はありません。証拠がないと言い出しにくいかもしれませんが、本当に証拠が必要になるのは裁判になった場合の話。相談の段階ではそこまで厳密に考えることもないでしょう。

そもそもセクハラは、思いがけないときに突発的に発生するもの。ある女性は整体院に勤めようとしたら、院長から施術の練習台になるよう命じられ、4~5人のスタッフの前で裸にさせられたといいます。このような場合、物的証拠を残すのが難しいことは想像できます。つまりセクハラの証拠などないのが普通。「証拠がないから相談できない」と思う必要はありません。

また、相談すればその記録が残ります。最悪、裁判になったとしても、自分が被害にあったあと、どういう行動をとったかが参照できるようになります。