貧しい家庭から首相に

最後にもう1つ、若者の希望ということで述べておきたいことがあります。報道によれば、マーリン氏は貧しい家庭の生まれで、幼くして両親が離婚し、父親はアルコール依存症。15歳の時にパン屋で働き、高校生の時には雑誌配達のアルバイトで生計を支えるという、厳しい少女時代を過ごしました。一家で高校、大学を卒業したのも彼女が初めてだったそうです。そんな彼女が大学、大学院を卒業して政治家になり、34歳で首相になるというストーリーは、ドラマのように痛快です。

これも、家庭の状況にかかわらず、勉強したい人は勉強を続け、能力を伸ばすことができる北欧のシステムのなせる業だと思います。日本も来年度より大学等への高等教育の「無償化」制度が始まりますが、これを出発点として、より多くの若者に希望を与えるシステムが発展していくことを願っています。

写真=SPUTNIK/時事通信フォト

鈴木 賢志(すずき・けんじ)
明治大学国際日本学部教授・学部長

1992年東京大学法学部卒。英国ウォーリック大学で博士号(PhD)。97年から10年間、ストックホルム商科大学欧州日本研究所勤務。日本と北欧を中心とした比較社会システムを研究する。