子供が一歳十一ヶ月のときにスウェーデンへ家族3人で移住した『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』の著者・久山葉子さん。日本で共働きをしていたころは「仕事も育児も中途半端」という思いから自己嫌悪に陥る毎日をおくっていたという彼女が、「親になっても、自分のやりたい仕事を週に四十時間やる権利がある」と断言できるように変わったスウェーデンでの暮らしとは? 共働き子育て家族に優しいスウェーデンならではの制度や、現地の働く母たちの制度の活用法について紹介する。

※本稿は著者・久山葉子『スウェーデンの保育園に待機児童はいない 移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし』(東京創元社)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Ivanko_Brnjakovic)

報道で伝わりきらないスウェーデン子育て支援の素晴らしさ

スウェーデンの育児休業制度については、日本でもしばしば報道されているのを目にする。“育児休業は子供ひとりに対して四百八十日もある”とか“父親がとらなければ消えてしまう九十日がある”といった記事をどこかで読まれた方もいるかもしれない。

確かに間違いではないのだが、それだけでは到底スウェーデンの子育て支援の素晴らしさを伝えきれていないというのがわたしの感想だ。

まず基本中の基本“育児休業四百八十日”という点から見てみよう。四百八十日と聞くと、「つまり約十六ヶ月か。日本の“子が一歳になるまで”に比べれば長いが、“保育園に入れなかった場合に延長できる一歳半”よりは短いじゃないか」と思われるかもしれない。しかしこの四百八十日というのは、あくまで実際に休む日数の合計である。たいがいの人は週に五日しか働かないから、週で言うと九十六週間、つまり約一年十ヶ月休めるということになる。