近年「管理職に問われるスキルも変化している」と話すのはいぬかいさん。「職場のメンタルヘルスが重視される今、部下の心の健康を保つことは管理職の必須能力。メンタルヘルス・マネジメント検定で理解を深めるのも手です」。ビジネスマネジャー検定は、女性管理職の増加とともに女性受験者も増えているという。

Case 1
職場の環境改善のために取った中小企業診断士が独立のきっかけをくれた

大学院を卒業後、“人と関わる仕事がしたい”と、設立直後の介護事業の会社でキャリアをスタートした松本典子さん。ところが、運営の混乱で現場は疲弊して、辞める人が続出する状態だった。「“このままではいけない”と自分なりに業務の改善に取り組んでみたものの、一社員ではできることが限られていて、職場全体の環境改善にまで至らなくて。どうすればいいのかわからず、悩んでいました」


松本典子さん

そんなとき、たまたま中小企業診断士という資格の存在を知った。

「マネジメントや経営について学ぶことで、もしかしたら問題解決の糸口が見つかるかもしれないと感じ、資格取得に挑戦することにしたのです」

とはいえ、難易度の高い国家資格。仕事と勉強の両立に苦労し、合格までに5年の期間を要した。

「1年目は勉強のリズムがつかめず苦戦し、2年目からは、受験指導校でできた仲間に刺激を受け、エンジンがかかりました。早起きしてカフェで勉強してから出勤、仲間とオンライン勉強会を開くことも。勉強を続けられたのは、仲間の存在が大きかったですね」

学びを通じて、経営やマネジメントの知識が深まり、職場環境の悪化の原因は、マネジメント教育の不足にあると痛感。現状を分析し、マニュアルやオペレーションを見直すなど、現場運営の地道な改善に取り組み、業務の効率化に貢献した。

資格取得は2016年、34歳。独立は当初の予定にはなかったという。

「独立してやっていけるか自信がありませんでした。でも、診断士の先輩たちからやりがいや面白さを聞くうちに心が動くようになりました。後悔したくないと思い、独立を決意しました」

勉強中に培った人脈を生かし、経営も安定。「人の役に立っているといううれしさや、本当にやりたいことができているという満足感があり、毎日充実しています。職場改善で悩んだ経験を生かし、介護施設のコンサルティングにも力を入れていきたいです」