教養を身につけるにはどうする?

POINT1 自分の頭で考える「思考習慣」を持つ

ここからは、具体的に教養を身につけるためのポイントを挙げる。最初のポイントは、「思考する習慣を持つ」ことだ。目の前の仕事や雑事に精いっぱいで、普段から何げない疑問や問題について、深く考えることを避けている人もいるのではないだろうか。「大切なのは、日常のさまざまな場面で、いったん立ち止まって考えてみることです。目の前で起こる事柄をそのまま受け入れるのではなく、意識的に『どうしてそうなのか』『なぜ自分はこんな気持ちになるのか』というふうに、掘り下げてみてください。この訓練を繰り返すことで、思考する習慣がつきます」

どんなことでもいい。会社で仕事仲間と意見が違ったとき、それはどうしてか? 上司の一言をうれしく感じたとき、なぜうれしいと感じたか? 洋服を買ったとき、なぜ自分はそれを選んだか? 理由や自分の気持ちをじっくり考えてみよう。

POINT2 キャリアで得た知識から、「教養の土台」をつくる

次のポイントは、「教養の土台」をつくること。自分はこんなふうに考えたり議論したりする、という「思考の軸」を認識することだ。

「みなさんは、大学やスクールなどで学んだり、仕事でキャリアを積んだりすることによって、ある種の専門的な知識を得ています。同時に、その領域での“思考法”も身につけているのです。これを確認することが、教養の土台となります」

例えばマーケティングのキャリアを積んできたのであれば、マーケティングの知識だけでなく、その領域で使われるさまざまなモデルを使って思考する方法が自分の中に蓄積している。この土台さえしっかりしていれば、異なった分野にも応用していくことができる。

「マーケティングとは違う領域、例えば人事や営業の課題を考えるときに、マーケティング的な考え方とどう違うか、というアプローチができます。人間関係や社会問題など、ビジネス以外の課題も、同じ方法で考えてみるとよいでしょう」

POINT3 異なる考えの人と議論。教養の土台を耕す

3つ目のポイントは、異なる考えを持つ人と建設的に議論することだ。このことを藤垣さんは「教養の土台を耕す」と表現する。

「違う意見の人との議論は、前述の“思考の軸”をしっかり認識することにつながると同時に、思考を発展させることにもなります」

自分とは違うさまざまな意見とぶつかり合うことは、自分の考えを根底からひっくり返して考え、客観的に見直すきっかけとなる。

「また、建設的に議論を進めるためには、自分の考えを主張するだけでなく、相手の考えにもしっかり耳を傾けなければなりません。違う価値観をリスペクトし、自分の意見に固執せず柔軟に考えを変えていける人こそ、真の教養人なのです」

教養の土台を耕すことは、一見めんどうな工程と感じる人もいるだろう。しかし、課題を解決するための力をつける1番の近道かもしれない。