ビジネスで大成功するために必要なことは何か。起業家の保手濱彰人さんは「真面目にいいものをつくれば売れると考える人は多く、自分もそうだった。しかしそれでは大きな成功が望めない可能性がある。いかに不真面目で変化球の思考を自分の中に取り入れられるかが大成功のカギだ」という――。

ヒットを狙うならコアファン層を視界に入れない

僕は大学在学中に初めて起業して以来、これまで複数のベンチャー企業を立ち上げてきました。もちろん初めからうまくいったわけではなく、20代のころは共同創業者が全員離脱したり、3億円もの負債を抱えたりとひどい失敗もしました。

キャラアート会長 保手濱彰人さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
キャラアート会長 保手濱彰人さん

事業が成功しだしたのは30代になってからです。現在の会社は『鬼滅の刃』や『東京卍リベンジャーズ』といった人気漫画の版権ビジネスで急成長し、なかでもお土産×キャラクターという切り口で売り出した「ご当地鬼滅の刃」シリーズは年間700万個を売り上げるヒット商品になりました。

こうした経験から、僕はヒットを狙うならコアなファン層を視界に入れないことが大事だと思うようになりました。コアなファンというのは漫画に限らずどんな商品にもいますが、コアなだけあって市場規模が小さいですし、商品を刷新したり新商品を出したりした際にクレーマーになりやすい存在でもあります。

既存顧客のヒアリングをしてはいけない

ですから、これから出す商品を大ヒットさせて大きな収益を上げようと思うのなら、コア層ではなくマス層を狙う必要があります。日本では、新商品を出す前に既存顧客にヒアリングを行う企業が多いですが、それではコア層の意見しか聞くことができません。

長年正しいとされてきたマーケティング手法ではあるものの、そうした正論や王道はすでに誰もが実践しています。同じことをしていたら他社に差をつけることはできず、新しいものやヒット商品も生み出せないでしょう。

世界で初めて車の大量生産を実現したヘンリー・フォードも、「もし顧客に彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬がほしい』と答えていただろう」と言っています。コア層は新しいコンセプトが想像できるわけではないのです