※本稿は、岡佐紀子『正しい答えを導くための疑う思考』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
「考える」機会が減っている
私はこれまで多くの企業で研修やコンサルティングを行い、何万人というビジネスパーソンにお会いしてきました。その中で最近よく感じているのが、「指示されたことに対して、何の疑問も抱かずにそのまま進めてしまう人が多い」ということです。
ある会社で、お客さまに封書で商品のご案内をお送りするという業務が発生したときのことです。先輩社員が新入社員に、「このチラシを、三つ折りにして封筒に入れてほしい」と言って見本を渡しました。このとき先輩社員は、チラシを三つ折りにして封筒に入れるという一見簡単な作業のため、見本があるから誰でもできるだろうと考えて、詳しい説明をしませんでした。
ところが、しばらくして様子を見に行ったところ、チラシの折り目はガタガタで、折った状態の大きさもバラバラ。その先の工程である封入作業で、封筒のサイズに収まらないものも多くあったため、すべてやり直す羽目になりました。
先輩社員は、「当たり前のことがなぜできないのか」「見本があるのになぜできないのか」「わからないなら、なぜ質問にこないのか」と疑問に思ったそうです。
でも、「見本を渡したからできるに違いない」と思い込んでポイントを明確にしていなかったこと、「相手はわかるはず」と思い込んで次工程を説明していなかったことは、先輩側の問題です。
一方で、新入社員からは、「仕事が覚えられない」「わからないことが、わからないので、質問できない」「もっと自分で考えて動けるようになりたいけど、良かれと思ってやった行動が先輩や上司の想いとずれており、良くない結果になってしまう」、といった悩みの声が聞こえました。
実はこれらも、どうしたらできるのかと考えていないこと、また、こうなるに違いないと思い込んでいることが原因です。
このように、先輩社員も新入社員も、仕事の進め方でフラストレーションを抱えています。
なぜ、こうした現象が起きてしまっているのでしょうか。
さまざまな要因が考えられますが、私は「考える力」が弱まっていることが大きな要因だと思っています。