相手の国の文化的背景、ものの考え方やコミュニケーションスタイルによって、自らをカメレオンのように変化させつつ、しっかりと自分の意見やビジョンを伝えられるようになったのが、今の山下さんの強みになっている。

一生続くのが、リーダーシップの学び

2000年以降、HR(人事)部門のリーダーとして活躍してきた。自ら学ぶ力がある人、人間としてどうあるべきかを自主的に考える人はリーダーシップを取る力もある人だと力説する。「リーダーシップはジャーニー(旅)だと思います。生きている限り終わりはありません」。社内や外部研修以外にも、他者の評価が高く、自分で検索して見つけて気に入ったデジタル記事は、スマホやネットで何度も見返している。

右は、各国の発信スタイルの違いに「やっぱりそうだった!」と納得した本。左は、女性の活躍推進について考えさせられた1冊。

先日「Hey Leadership! Why are you so elusive?」という記事を見つけたが、投稿者は偶然にも山下さんがゼネラル・エレクトリック(GE)グループに在籍していたときに上司だった男性だ。タイトルを直訳すると「リーダーシップよ、なんでそんなに手に入りにくいんだ?」。

「彼は最後にGE全体のHRのトップになって退職したのですが、リーダーシップジャーニーをずっと続けていた人。彼自身、研修をたくさん受け、本も読みこみ、周囲からフィードバックやアセスメント(評価)ももらって、いろいろな勉強をしたのに『自分には何かが足りない』とずっと悩んでいたそうです」

My Trend●料理はイタリアで2週間スクールに通ったほど好き。イタリアのマンマの味を、ノートに書き留め、おもてなし料理にできるほど上達。

そこで彼は考えた。悩むのは、改善点ばかりを指摘されるからではないか。自分にない能力を高めろと言われても辛いが、自分が元来持っている資質をもっと良い方向に伸ばせばいい。「リーダーシップとは、自分の外側に求めるだけではなく、自分の中の“内なる発見”かもしれない、という記事には感動しました」

リーダーシップは夫婦、友人、地域の人間関係など、どんなシーンでも使えるスキルである。山下さんもまた、生涯を通してリーダーシップジャーニーを続けていくのだろう。

▼山下さんの学びを振り返る!
25歳~ 実践英語。基本的にOJTで学ぶ。いつの頃からか英語でも夢を見るようになる。
30代後半~ リーダーシップやコーチングの研修。上司やメンターからのフィードバックを受けながら研鑽を積む。
50歳 リーダーシップ・コーチの認定を取得。

文=東野 りか 撮影=神ノ川智早

山下 美砂(やました・みさ)
アクサ生命保険 常務執行役員兼人事部門長

1964年生まれ。神戸市外国語大学卒業後、ペンシルベニア大学コミュニケーション学部修士課程修了。ゼネラル・エレクトリックグループに16年在籍。コーチジャパンアジアを経て2017年より現職。