欧米文化に憧れを抱き、海外留学を実現
山下美砂さんが思春期を迎えた1970年代後半から80年代。日本の若者たちはアメリカなど欧米の文化に憧れ、海外留学や現地での生活を熱望したものだが、山下さんもその中の1人だ。小学生時代から英語を学び、外国語大学で英語を専攻した後、アメリカの大学に留学した。
「卒業後さまざまな会社で英語を使う業務に携わりましたが、英語を学ぶ真の目的は、より深く正しいコミュニケーションをとるためだということが、年齢を重ねるごとにわかってきたのです」
日本にあるアメリカ系、フランス系の会社に勤務し、異なる文化や背景が混在する多様性の中に身を置いてきた。山下さんは業務で英語をシャワーのように浴びてきたが、英語の使い方は国によってそれぞれ。英語が母国語でない国の人は、母語のロジックに引き寄せられるということも、実践で学んだ。
「アメリカ人は最初に結論をどーんと言って、その後なぜならばと論理的に説明するけれど、日本人は細かく説明した後、最後に結論を話す。フランス人は日本人に近く原理原則に厳しくて細かい話が好き。善しあしの問題ではなく、文化的なギャップがあることを前提に対話する感覚は、実務の中で培われるものです」
相手の国の文化的背景、ものの考え方やコミュニケーションスタイルによって、自らをカメレオンのように変化させつつ、しっかりと自分の意見やビジョンを伝えられるようになったのが、今の山下さんの強みになっている。
一生続くのが、リーダーシップの学び
2000年以降、HR(人事)部門のリーダーとして活躍してきた。自ら学ぶ力がある人、人間としてどうあるべきかを自主的に考える人はリーダーシップを取る力もある人だと力説する。「リーダーシップはジャーニー(旅)だと思います。生きている限り終わりはありません」。社内や外部研修以外にも、他者の評価が高く、自分で検索して見つけて気に入ったデジタル記事は、スマホやネットで何度も見返している。
先日「Hey Leadership! Why are you so elusive?」という記事を見つけたが、投稿者は偶然にも山下さんがゼネラル・エレクトリック(GE)グループに在籍していたときに上司だった男性だ。タイトルを直訳すると「リーダーシップよ、なんでそんなに手に入りにくいんだ?」。
「彼は最後にGE全体のHRのトップになって退職したのですが、リーダーシップジャーニーをずっと続けていた人。彼自身、研修をたくさん受け、本も読みこみ、周囲からフィードバックやアセスメント(評価)ももらって、いろいろな勉強をしたのに『自分には何かが足りない』とずっと悩んでいたそうです」
そこで彼は考えた。悩むのは、改善点ばかりを指摘されるからではないか。自分にない能力を高めろと言われても辛いが、自分が元来持っている資質をもっと良い方向に伸ばせばいい。「リーダーシップとは、自分の外側に求めるだけではなく、自分の中の“内なる発見”かもしれない、という記事には感動しました」
リーダーシップは夫婦、友人、地域の人間関係など、どんなシーンでも使えるスキルである。山下さんもまた、生涯を通してリーダーシップジャーニーを続けていくのだろう。
25歳~ 実践英語。基本的にOJTで学ぶ。いつの頃からか英語でも夢を見るようになる。
30代後半~ リーダーシップやコーチングの研修。上司やメンターからのフィードバックを受けながら研鑽を積む。
50歳 リーダーシップ・コーチの認定を取得。