渾身の企画が敗退! その悔しさをバネに
PRとしても経験を重ねてきた松田さんに大きな転機が訪れたのは、2017年のこと。ノバレーゼが全社員を対象に行っている新規事業提案制度への応募だった。
「現在の『ANDYOU』につながるドレスのシェアリング事業を企画したのですが、最終審査で落選。それまでも毎年応募はしていましたが、落選をあんなにくやしいと思ったことはありませんでした。ニーズは絶対にある、どうしても実現させたい。1年間、ふつふつと思いをたぎらせ、事業計画を練り直し、翌年、同じ案で再チャレンジしました。プレゼンのときには、机をバーン!『今日は、皆さんを説得しにきました(キラーン)』。猛ってましたね(笑)」
松田さんの企画は、見事大賞を獲得。社長になることが決まった瞬間だった。
「あんなにやりたがっていたのに、あんなに猛っていたのに、『年明けから子会社、よろしくね』と告げられたときにはかなり動揺しました。会社の事業部として立ち上げさせてもらえると思い込んでいたから、まさか自分が社長になるなんて、びっくりして。でも、ここまで任せてもらえることって、なかなかない。覚悟を決めました」
松田さんが手がける「ANDYOU dressing room」では、現在、海外から買い付けたパーティドレスを中心に600着前後を取り扱う。
「結婚式のスタイルが多様化するなか、パーティドレスのバリエーションが広がっていないのはもったいないと感じます。ゲストの装いは、どこの会場でも、どの季節でも変わらないことが多くて。『衣装にあまりお金をかけたくない』『毎回、同じドレスは着られないし、困った』こんな後ろ向きな声も、よく聞かれます。ハイセンスなドレスを手ごろな値段で借りられたら、もっと結婚式を楽しめるはず、と思っています」
破天荒な社長に憧れつつ、地道に堅実に
現在、創業1年目。新米社長として奮闘する松田さんは、着実な手応えをつかみつつある。
「1年目はジリジリと上がった感じ。ニーズは絶対にあるし、意義もあると確信しています。ドレスのシェアリングサービスはほかにもありますが、ウェディング企業の子会社だから提供できる情報、サービスもある、と考えています。来年は、爆発的に上がる仕掛けをしていくつもりです」
目標は3年で年商3億円の企業に成長させること。持ち前の論理的思考と徹底したマーケティング調査力、そしてPR時代に培ったドレスの審美眼をフル活用して、目標へのステップを踏んでいる。
「私、頭でっかちなんですよね。社長になる人には、失敗を恐れずどんどん行動できる人が多いと思います。でも、私は徹底的に調べて、考えて、絶対に行けると確信してから動きたい。でも、それもまだ自分に自信がないからなのかもしれません。事業を続けていって、私自身の選択が経験となっていけば、突き抜けたチャレンジもできるようになるのかもしれません。もっともっとやりたいことはある。だから、頑張れ、自分! という現在です」
文=浦上藍子
1991年生まれ。上智大学総合人間科学部を卒業後、ノバレーゼに入社。社長室・広報室でIRやPRを担当する。2018年10月、新事業提案制度「ノバレボ」に応募し、大賞を受賞。2019年1月、アンドユー(ANDYOU)を設立し、代表取締役社長に就任。4月よりサービス開始。