日本企業が実行すべき3つのアクション

【ベセラ】私たち自身も達成を目指している最中ではありますが、その上で3つのアドバイスを贈りたいと思います。1つめは「経営戦略として取り組んでいく」と社会に宣言し、取り組みを忍耐強く続けていくことです。ダイバーシティ&インクルージョンの達成には時間がかかります。私たちは取り組みを始めて25年になりますが、まだまだ満足していません。

【白河】組織風土や社員の意識にも変革が必要ですから、やはり長期的な視点が大事なのですね。

相模女子大学、昭和女子大学客員教授 白河桃子さん

【ベセラ】その通りです。2つめは、意図を持った人材採用を行うことです。取り組みを達成しうる企業体系をつくるには、まずそれに合った資質を持つ人材を集めなければなりません。

【白河】それは興味深いですね。御社では、新入社員の採用に関してどんな変化があったのでしょうか。

【ベセラ】一例を挙げると、学生を面接する社員や入社案内に記載する役員について、「当社を示す男女比率」を考えるようになりました。例えば、面接官や役員が全員男性だったら、女性はそれを見て入社したいと思うでしょうか。採用したい人材像が明確であれば、入社希望者や社会との接点を、それに沿ったものになるよう見直すべきだと思います。

【白河】確かに、外部との接点になる社員が全員男性だったら、「女性は活躍できない会社なのかな」と思われてしまいますね。それでは、意欲の高い女性には敬遠されてしまうでしょう。

【ベセラ】3つめは、社員の「能力」に焦点を当てて組織をつくることです。組織内で誰かを昇進させるなら、正しい経験とスキルを身につけているからという理由でなければなりません。女性活躍を進めたいからという理由で女性を登用するのは、ダイバーシティ&インクルージョンを終わらせる行為です。ここは絶対に妥協してはいけないと思っています。

昇進理由は仕事への適正であるべき

【白河】数値を上げるために女性を昇進させるようでは、よい組織はつくれないということでしょうか。確かに女性活躍を目標にしすぎると他の人はそっぽを向いてしまいます。

【ベセラ】その通りです。社内のワークショップでは、昇格や組織変更をアナウンスする際、能力にフォーカスして紹介すべきだという話も出ました。性別や子どもの有無、好きなスポーツといったことよりも、いかにその仕事や組織にふさわしいかを知らせるべきだと。

【白河】昇格した人を理解するにあたって、注目すべきは性別ではなく能力だという考え方が浸透しているのですね。女性や外国人も多い御社では、多様性はすでに高いレベルにあり、今はそれを理解し生かし合う「インクルージョン」を追求する段階にあるようです。日本企業にも、3つのアドバイスを参考にぜひ追いついてほしいと思います。