管理職との対話で見えたこれからの課題

【白河】カルチャーの醸成やスキルの獲得に向けて、御社ではどんな取り組みをされているのでしょうか。

【ベセラ】当社では、管理職クラスの社員には、システムとカルチャーを両輪で回せるだけのスキルを求めています。また、そのスキルを生かして、部下たちが正しいカルチャーとスキルを持てるよう導くことを奨励しています。

【白河】そうすると、マネジャーは経営戦略への深い理解や多様な部下の育成など、かなり高いダイバーシティマネジメントの能力を身につけておく必要がありますね。管理職を対象としたセミナーなども実施しているのでしょうか。

【ベセラ】ダイバーシティ&インクルージョンは経営戦略の一環ですから、個別のセミナーよりも、日々の中でアクションを起こしていくことを重視しています。対話はよく行っていて、先日は25人のリーダーたちと、ダイバーシティ&インクルージョンにどんなバイアスを持っているか話し合いました。

【白河】その対話の中で、社長が特に驚いたバイアスは何でしょうか。

【ベセラ】一部のバイアスは女性にはよく知られているけれども、男性はまったく気づいていないこと、様々な家族の形の選択(子どもをもたない、独身でいる、離婚する等)への理解不足、チームの結束力を高める目的で開かれた飲み会が、ワーママを孤立(除外)させてしまっていたこと、文化に関係なく、幼少期に男性的・女性的であるべきと言われて育ってきていることなど、たくさんありました。これらは当社の今後の課題と言えるでしょう。ダイバーシティ&インクルージョンを性別を超えた枠組みで考えていくために、今後もさまざまなグループに本音を聞いていく必要があると思いました。

ワーパパも成功する会社

【白河】バイアスを崩す取り組みも始まっているのですね。女性活躍が進んでいるからこそ課題になる育休への対応も、すでに仕組みが出来上がっているようです。P&Gジャパンでは今後も、子育てしながら仕事でも成功する女性が増えていきそうですね。

【ベセラ】当社はよく「働くママが成功している会社」ということで注目されますが、実は「働くパパ」もいるんですよ。他社に勤務している妻を支え、子育てをして、仕事でも成功している男性ですね。これも、当社が目指すダイバーシティ&インクルージョンの成果の一つだと思っています。

【白河】すばらしいことですね。男性が子育てに関わるという視点は、日本企業ではほとんどこれからの課題です。他の企業でも、男性と女性の双方が家庭でも仕事でも力を発揮できるようになれば、日本のダイバーシティ&インクルージョンは大きく前進するように思います。では最後に、女性活躍に関して“覚悟の一言”をお願いします。

【ベセラ】冒頭に言ったように、私たちは女性活躍という面でもまだまだ満足はしていません。引き続き、経営戦略の一環としてダイバーシティ&インクルージョンを推進し、自社の目標達成だけでなく、他社や社会にも影響を与えられるよう取り組んでいきます。

構成=辻村洋子

白河 桃子(しらかわ・とうこ)
相模女子大学大学院特任教授、女性活躍ジャーナリスト

1961年生まれ。「働き方改革実現会議」など政府の政策策定に参画。婚活、妊活の提唱者。著書に『働かないおじさんが御社をダメにする』(PHP研究所)など多数。