データからはわからない「意識や本音」

満留さんからは、こんな指摘もありました。

「金沢市は、同じ総務省調査の『他の和生菓子』でも長年にわたり首位です。市民がアイスクリームや和生菓子などの“甘いもの”を頻繁に購入するのは、加賀百万石の『茶の湯文化』の影響もあるように感じています。お茶を楽しみ、甘いものを楽しむ。お客さまに対しても、スイーツでもてなす文化だと感じています」

「和菓子文化」との関連性は、東京のアイスクリームメディア・編集長も同意見でした。

前述の「家計調査」をもう少し続けます。青森市は「リンゴ」の購入額が金額で全国2位、数量では全国5位となっていました(1位はいずれも盛岡市で、長野市は3位と2位)。リンゴといえば青森と思っている人が多いかもしれませんが、トップではないのです。

青森市のこの結果を「当然」と受け取るか、「意外」と受け取るか。意外と感じて理由をさぐると、見えてくることがあります。先日の出張では「青森人にとって、リンゴは買うものではなく、もらうものです」(30代の女性)という地域の慣習が垣間見えました。

前述の2006年の市町村別生産量では、青森市は長野市に次ぐ3位(生産量首位の弘前市は、県庁所在地・政令指定都市ではないので、「家計調査」の対象外です)。

例えば「コーヒーやリンゴに関して、弘前市を調べると、青森市とは違う結果になるでしょう」と地元関係者は話します。確かに、興味深い結果が出てくるかもしれません。

マーケティング関係者は、昔から言われる「百聞は一見に如かず」を重んじる人が多いようです。調査結果をそのまま受け取るのではなく、現地に足を運ぶ大切さを、「ちゃんと普通に生活すること」と話す人もいます。普通に生活=消費者目線の徹底だと思います。

高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト/経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)、2024年9月26日に最新刊『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)を発売。