3.自律的成長軌道に乗れる

識学的強み分析の3つ目は、自律的成長軌道に乗せることができる、というものだ。組織コンサルティングの現場で対峙する経営者・管理者から聞かれるのは「社員が勉強しない」「目標達成に向けて努力しない」さらには「教えてもらってないのでできません」といった声が多く聞かれるとのことだ。

日本企業の慣習では、未熟練の新卒を多く採用することになるが、この傾向から見ても、自社に引き入れる人材の観点として成長する見込みがあるか、成長意欲があるか、が非常に重要な観点となる。

ここでも、やはり集団競技の経験者はその強みを発揮できる。

小学生にもわかるように成長を定義すると、出来ないことが出来るようになること、と言い換えることができる。スポーツも仕事もこの成長の連続であり、成長できる人間がより多くの対価を得ることになる。スポーツ経験者は、特にこの成長を“自律的に”反復してきた経験があり、その反復によって実際に成長した実績を持っていることになる。

具体的には、ある目標や課題が眼前にあり、できないことを突き付けられるわけだが、ポジションを獲得するためにその課題に対する「差分を認識」し、どのような練習をすればよいか、誰に学びを獲得しに行けばよいか、どの程度時間をかければよいか、といった「対策の立案」を行う。この繰り返しによって成長を果たしているのだ。

仕事においても原理は同じで求められる成果に対して「できないこと(=差分)の認識」からはじまり「どうしたらできるだろう(=対策)の立案」を実行していくことで、組織の要請に到達していくのだ。さらに付け加えるならば、競争環境におかれていたスポーツ経験者はこの成長サイクルを“自律的に”展開していくことを迫られる。だまって待っていてはただ、他者に置いて行かれるだけだからだ。

これら3つの強みを兼ね備えた人材は、組織の中で役割を全うし、チームの目的の達成に貢献しやすいのである。

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冨樫 篤史(とがし・あつし)
識学 新規事業開発室 室長

1980年東京生まれ。02年 立教大学経済学部卒。15年グロービス経営大学院にて経営学研究科(MBA)修了。現東証1部のジェイエイシーリクルートメントにて12年間勤務し、主に幹部クラスの人材斡旋から企業の課題解決を提案。名古屋支店長や部長職を歴任し、30~50名の組織マネジメントに携わる。15年、識学と出会い、これまでの管理手法の過不足が明確になり、識学がさまざまな組織の課題解決になると確信し同社に参画。大阪営業部 部長を経て、現職。著書に『伸びる新人は「これ」をやらない』(すばる舎)がある。