イメージ優先の転職はNG
——「こんな転職希望者は要注意!」というエピソードはありますか?
【下田さん】40代にもなるとある程度自分の価値観が固まってきています。そのため、単に「おもしろそう」とか「ここの会社、良さそう」というイメージを優先して転職すると、あとでギャップに苦しむケースが多いです。ですから、「ここの会社なら自分がこんなふうに活躍している」という具体的なイメージを持てる会社を選ぶのがベターです。
特に長年、大手企業で勤めてきて、これまでに一度も転職経験がないような方は、ベンチャー・スタートアップ企業に憧れを抱きがちです。それで、ベンチャー・スタートアップ企業は経営者をはじめ従業員もわりと個性が強い人が多いので、転職してみたはいいけれど、思っていた以上に社風や文化が合わなかったと、転職後に話されるケースはよくあります。
大手からベンチャー・スタートアップへの転職は慎重に
【畑さん】大手とベンチャー・スタートアップは会社の規模だけでなく、仕事のスピード感も全然違いますからね。大手だと入社後半年くらいの助走期間を設けてくれますが、ベンチャーは入社当日から全力疾走で、すぐに結果を出すことが求められる。頭では理解していても、仕事のやり方やスタンスを急に変えるのは、年を重ねていればいるほど難しいかもしれません。
【下田さん】新しい会社に入ったら、その会社の物差しで物事を理解していかなくてはいけませんもんね。プライドの高い人は「前の会社ではこうだったから」とよく口にするのですが、前のやり方は一切通用しないと思ったほうがいい。大手とベンチャーではあらゆることが違って当然ですから、大手でのことを持ち出すと煙たがられるに決まっています。
【畑さん】まさに「郷に入れば郷に従え」ですね。
【下田さん】ただ、ベンチャー・スタートアップは、高学歴で大手企業での経験がある優秀な人材を求めているので、大手→ベンチャー・スタートアップは非常に転職がしやすいんですよね。求められているからこそ行きたくなってしまう気持ちはわかるのですが、20~30代と比べると、どうしてもキャリアのやり直しが難しい40歳を過ぎてからの転職だからこそ、よくよく考えたほうがいいと思います。
まぁ、どうしても合わなかったとしても人生1回しかないので、「いい学びの一つにはなったね」と言えるとは思うんですが。
【原田さん】過去に一度でも小さい会社を経験していると違うんですが、免疫がないままに40代で初ベンチャーだとギャップが激し過ぎるかもしれません。もちろん成功しないとはいいませんが、リスクは高いと思います。
【下田さん】特に金融業界は、転職未経験者が多いですしね。
【畑さん】確かに転職回数は、業界によって差がありそうです。メーカー業界で、エグゼクティブ層の転職をお手伝いする場合、経験未経験者は圧倒的に少ないですね。
【下田さん】今の40代は就職氷河期を経験しているので、収入の安定している金融業界に新卒で身を置いたら、余程のことがない限り転職しようとは思わなかったんだと思います。