5.教養を学ぶ理由

経済活動と不可分な存在として教養を学び、行動に結びつける

「金銭感覚を磨くには、教養を身につけることが欠かせません」

加谷さんはそう断言する。教養は経済活動と切り離せない存在。富裕層の家庭ではお金を払ってでも子どもに教養を教えるそうだ。でも、なぜ教養がお金と結びつくのだろう。

「そもそも教養に含まれるのは、物事の本質を見極める総合的な知識や考え方。これが人格や行動に表れたときに初めて教養となります。大きなお金を得ようとするなら、目先の情報ではなく物事の本質をズバリと見抜く力が欠かせないのです」

社会的・経済的な成功者の多くは、細かい専門知識よりも「人はどうすれば喜ぶのか」「新しい技術をどうビジネスに活かせるのか」といった本質的な部分を的確に理解して、行動に移しているという。営業職であれば、営業テクニックよりモノを売るという行為の本質を理解したほうが、成果をあげられるというわけだ。

教養というと文学や芸術を思い浮かべるかもしれないが、ほかにも社会学、経済学、数学、情報工学、哲学、歴史学などと幅広い。今回、加谷さんが伝授してくれた「人付き合いの極意」や「仕事への取り組み方」は、社会学をベースにしている。

なかでも、お金に直結する思考・センスを磨けるのが数学だ。たとえば、数学における「相関関係」と「因果関係」の違いを理解すれば、世の中の事象を正確に把握でき、マーケティングなどに結びつけられる。

「アインシュタインが相対性理論を発見できたのは、常識では考えられない仮説を愚直に研究した結果だといわれています。このように、常識を疑って、直感に頼らずに物事を数学的思考で考えられる人は、社会的にも経済的にも成功しやすいといえるのです」

一方、教養における情報工学では、プログラミングなどの実務的なスキルよりも、ITとはどのようなものかという本質に重点が置かれる。たとえば、インターネットの検索エンジンは、基本的に相互リンクの数が多いサイトの表示順位が上がる仕組みになっているが、これはITの「集合知」に基づくもの。集合知とは「皆が言っていることは案外正しい」というような概念で、上位に表示される項目は正しい可能性が高いことになる。この仕組みを知って検索エンジンに向かうと、情報を精査しやすくなるだろう。

ほかに、コンピュータを高速で動作させるための原理や、OSとアプリの水平分業の仕組みのように、仕事の効率化や組織づくりなどにも応用できる知見も情報工学の教養に含まれている。

お金持ちの習慣の共通点には根底に教養があるのだ。苦手な分野も教養として学び直せば、貯蓄額に変化があるかもしれない。

文=上島寿子 イラスト=大野まみ

加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家

1969年宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。