「一度で完璧に」より「何度も軽く」伝える
ホウレンソウに期待することは効率的なコミュニケーションです。情報伝達のコストを下げ、的確に伝えることが大事だと教わってきました。
しかし、多くの人と人とのコミュニケーションを見てきましたが、一度のホウレンソウで完璧に意図や意思が伝わっていることなどほとんどありません。
同じだけの知識があって、同じ経験をして、同じように考える人同士でもない限り、言葉にして伝えたところで100%伝わることなどありえないのです。
私自身、本を執筆するようになって感じるのは、どれだけ思いを込めて書いた本であっても、多くの人に真意までは伝わらないものだな、ということでした。考えていることを口頭だろうと文章だろうと言葉にした時点で、いくばくかの情報の減衰や歪曲があるのです。
そのため大前提として、人と人とのコミュニケーションにおいて、「一度で伝わる」「完璧に伝わる」という考えは捨ててしまった方がいいでしょう。
一度で伝わる完璧なコミュニケーションを目指すよりも、ザッソウを使って何度も軽く伝える方がうまくいく可能性が高いのです。
壁打ち役がいれば、「悩む」が「考える」に変わる
仕事をしていれば難しい問題に直面することは日常茶飯事です。
私に関していえば、今は経営者をしていますから、経営にまつわることで悩み、考えることがあります。管理職をしていた頃は部下の管理について、プログラマだった頃は技術について、若いうちはキャリアについて悩むこともありました。
難しい問題にぶちあたったとき、人は「悩む」と「考える」のどちらかをしています。では、両者の違いは一体なんなのでしょうか。
「悩む」は、前に進まず同じ場所で思考が止まっている状態。「考える」は、前に進むためにどうすればいいかを思案している状態、と聞いたことがあります。
その定義によれば、いくら悩んだところで問題が解決することはありません。問題と対峙したときは、「どうすればいいか」に意識を向けるのです。そうすれば「悩み」ではなく「考える」ことになります。
とはいえ、1人でいると前に進む決断をするのはなかなか難しいものです。
そんなときもザッソウです。決めあぐねていたことを仲間に相談しているうちに、前に進むしかなくなって、考えるようになったりします。
よく「壁打ち役」といったりしますが、1人でウンウンと考えるよりも誰かと話しながらの方が、思考が進むことがあるはずです。壁打ち役の仕事がザッソウになるのです。