男性の結婚満足度が高い理由

結婚満足度は男性のほうが高くなる傾向にあります。理由は、家事もメンタルサポートもしてもらえるからです。女性は、男性に対してそういった期待はしていないようです。

この男女の差を「サポートギャップ仮説」と言います。メンタルサポートを与えるのは基本的に女性。男性は、結婚すればサポートしてくれる配偶者を得ます。他方で女性は、これまでストレスを減らしてくれた同性の友達との関係をある程度失ってしまいます。夫はその代わりになりません。だから、結婚すると幸せになる度合いが男性のほうが少し高くなります。

家事は愛情表現の一つの手段ですが、ここにも男女のギャップがあります。男性は結婚していないときもそれほど熱心に家事をしませんが、結婚するとこの傾向が加速します。独身一人暮らしの男性の57%が、夕食の用意を週に数回~毎日行っているというデータがあります(筒井淳也『結婚と家族のこれから』p116)。しかし、妻がいる男性の場合この数値が減り、母親と一緒に住んでいる男性の家事の程度とほぼ同等になります。ですから、やはり日本の男性にとって妻というのは、お母さんの代わりであることが多いのかもしれません。

結婚すると負担が増える女性

一方で女性の場合、独身の一人暮らしよりも、結婚している人のほうが、夕食の用意と掃除をしている割合が高くなります。つまり、「結婚して家事が分担できるようになって負担が減った」ということにはならず、むしろ家事で忙しくなっているのです。これでは満足度が低くても無理はありません。

この状況を改善していくためには、家事を頑張りすぎないことも大事でしょう。働いている女性ならなおさらです。「ワーク=仕事、ライフ=家事・育児」という考えを改め、「ワーク=仕事・家事・育児、ライフ=自由な時間」と捉え直すことが大切です(「“日本式共稼ぎ”はなぜこれほど疲弊するか」参照)。

注目したいのは、結婚満足度が下がらない人たちです。彼らの特徴は、配偶者によるメンタルサポートが大きいことです。配偶者が悩みをきちんと聞いてくれる、褒めてくれる、などの値がキープできていれば、全体の結婚満足度もそんなには下がりません。このように互いに幸福度が下がらない工夫や努力のやりようはあります。何げない会話でもいいですし、お互いを尊重して過ごすようにしたいところです。

構成=梶塚 美帆 写真=iStock.com

筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授

1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。