40歳で長女を出産し、働き方を大きく転換

しかし、異動直後、海外で事件が起き、日本人も巻き込まれて、連日、ニュースで取り上げられる騒ぎに。マスコミからは、JTB経由で予約し、事件に遭遇した顧客の情報を求められた。

「もちろん個人情報を話すわけにはいかないのですが、とにかく記者さんの責め立てがすごくて、私もまだ慣れていなくて、つい『今、調べております』と答えてしまったんですね。すると、もちろん『何時にわかるんですか? あんた調べているって言うたやんか』と5分ごとに聞かれて」

結局、数時間後に「私どもの口からは明かせません」と謝罪し、記者たちの怒りを買ってしまった。それ以来、広報のモットーとして「逃げるな、隠すな、嘘つくな」を心に決め、後輩たちにもそう指導している。

「あのときのことは今でも夢に見ますよ。間違いなく私のJTB人生で一番の大失敗でしたね」

そんな強烈な体験もしたが、それをきっかけに初期対応の大切さを実感。その後は会社と社会をつなぐ広報の仕事に情熱を傾けた。そして、47歳のとき、JTB西日本本社広報室長に就任。そこから役員への道が開けた。

「子どもを40歳で産んだことも、大きな転機になりました。計算外だったのは自分の子どもがこんなにかわいいということ。知らんかったわと(笑)。子どもと一緒にいたいから仕事を早く片付けて家に帰ろうとなるわけですよ」

仕事中心だったワーク・ライフ・バランスを見直し、現在の働き方改革とダイバーシティの推進を担う仕事につなげている。

「やはり会社の永続的な発展と社員の幸せ。これが両輪で進んでいかなければならない。社員にとって働きやすい職場とそのための制度を活用してほしいですね。そして、女性も思う存分、仕事で活躍してほしい。本当に母親のような気持ちでそう思っています」

役員の素顔に迫るQ&A

Q 好きな言葉
「夢見ることができれば、それは実現できる」(ウォルト・ディズニー)

Q 趣味
演劇・ミュージカル鑑賞

Q ストレス発散
仕事と子育ての両方を楽しむ

Favorite Item

星の王子さま
サン=テグジュペリの名作童話。「『肝心なことは目に見えない』など、珠玉の言葉が詰まっていて、付箋を貼って持ち歩いています。今の本は娘からのプレゼント」(髙﨑さん)

 
髙﨑邦子(たかさき・くにこ)
JTB 執行役員
関西学院大学法学部を卒業後、1986年に日本交通公社入社。97年に管理職初登用。2011年、JTB西日本本社広報室長に就任。14年に同社CSR推進部長。16年、同社教育旅行神戸支店長。18年、JTB執行役員となり働き方改革・ダイバーシティ推進担当に。

文=小田慶子 撮影=市来朋久

髙﨑 邦子(たかさき・くにこ)
JTB 人事部 執行役員 働き方改革・ダイバーシティ推進担当

関西学院大学法学部を卒業後、1986年に日本交通公社入社。97年に管理職初登用。2011年、JTB西日本本社広報室長に就任。14年に同社CSR推進部長。16年、同社教育旅行神戸支店長。18年より現職。