撮影=小川 聡

うれしかった、インターンの行動

先日、うれしい場面に出会った。ある店舗でのイベントを訪ねたときのことだ。お客様の車が到着しているのに、社員たちはみな、他のお客様の応対をしており、対応することができなかった。そのとき、インターンシップ中の学生がお客様の元へ走って行った……。彼女は、まだ学生だから、お客様に対して何をすればいいのかはよくわからないはずだが、店の雰囲気や先輩たちの「お客様をお待たせしてはいけない」という普段の行動や言動を見聞きしていたようだ。だから、何をすればいいかわからなくても、とにかく走った。

先輩たちの素晴らしい姿が頻繁に見られるという「環境」があるから、若い人たちにとっても、素晴らしい行動が「当たり前」になっていく。

営業スタッフに限らず、うまく結果を出せない若手社員がいたとしたら、それは「環境」のせいなのだと思うようになった。私は常日ごろ、「うちの会社には、必要でない人なんて1人もいない」と言っている。人の性格は変えられない、でも、考え方は変えられる。考え方にいい影響を与えられるのはほかでもない、私も含めた先輩社員たちだ。

素晴らしい上司とは、どんな人か

店長をはじめとした先輩社員の役割は大きい。若手社員が生き生きとと働ける環境、お客様に喜んでいただけるスタッフの素晴らしい行動を引き出す環境をつくるのが、まさに先輩社員の仕事だからだ。

店長が変わると、店が変わる、ということはよく起こる。一例を挙げるなら、最初に店の整理整頓が進んで、きれいになる。それからスタッフが元気になって、お客様が店に来てくださるようになる。私は、こういった変化にまったく驚かない。繰り返しになるが、人の考え方、行動は環境で決まるからだ。元気になった店では、スタッフが行動的になる。みなが次のステップへチャレンジをするようになる。行動して、失敗して、その先にやっと成功がある。もちろん、チャレンジしたスタッフを高く評価しなければならない。でなければ、仕事が面白くならない。

チャレンジには大いに結構だが、営業の場面では、現場スタッフが判断を間違うと、お客様とのトラブルに発展しかねない。難しい局面で、どう考えればよいか——。つまり「正しいことは何か」を若手社員に伝えるのもまた、先輩社員の役目だ。当社が大切にしている想い、経営理念をきちんと教えてやってほしい。そうでなければ、経験の少ない若手社員が安心して働けない。

すさまじい変化の中で、ますます厳しい戦いが待っている自動車業界だが、社員たちが生き生きと働ける環境をさらに整えていけるよう、現場とコミュニケーションを取りながら、いろいろな策を打っていくつもりだ。

(構成=梅澤聡)