▼食べていないかのごとくきれいなカトラリーやお箸。お酒は自分のペースで控えめに

フライト時の楽しみの1つである機内食。これも実は、習慣の差が出やすいポイントだ。

「お食事の後がとてもきれいなんです。フォークやナイフ、なかには和食をお箸で食べる外国人の女性もいますが、本当に食べたの? と思うほど汚れが見当たりません。日頃から格式の高いお店で食事をされているので、自然に身についた作法でしょう」

“空”の事情を理解して、CAに協力してくれる

食事のマナーだけではなく、CAのサービスに対してもしかり。

「星のついた名店の料理を提供していますので、私たちは料理の温度管理や盛りつけなどは厳しくチェックしています。でも、機内でのサービスには限度があります。気象条件によって揺れたらサーブがもたついてしまいますし、途中でいったんやめなければいけないことも。そこで、『早く食べたい』『コレがほしい』とレストランレベルの要求をするのは、スマートとは言えません」

ファーストクラスの女性は文句を言うどころか、CAを気遣い、協力してくれることもあるという。

「あるフライトで、お客さまが『やっぱり和食が食べたくなった』と、ウェブで予約したメニューの変更を希望されたことがありました。しかし、たまたまその日は和食が人気で、数が足りなかったのです。そうとは言えず困っている様子の私を見て、後ろの席のオーストラリア人女性が『気が変わって、洋食が食べたくなったわ』と声をかけてくれたんです。これは明らかな助け舟。恩を着せない言い方も含め、上質な気遣いにふれて感動したのを覚えています」

機内ではお酒が飲み放題だが、むやみに飲みすぎないのも一流の女性たちの共通項。エコノミーやビジネスでは、置いてあるお酒を片っ端からオーダーする人も見受けられるが。

「ひいきの銘柄をゆっくりと味わったり、新しく入ったワインを試飲したり、とても上品にお酒を楽しまれている印象です。最初のご挨拶の際に『ナイトキャップに少しだけブランデーを』とオーダーされたアメリカ人のVIPがいらっしゃいましたが、そのスマートな物言いに、女性の私でもほれぼれしてしまいました」

時と場所に合わせた臨機応変な心遣いも忘れない。一流の女性の振る舞いは、奥深いものだった。

鈴木愛子(すずき・あいこ)
元国際線CA
大学卒業後、国内航空会社に入社。CAのかたわらカメラマンやマナー講師など他分野で活動。2017年退職後起業し、現在D-Kids International School代表として英語学校を運営。

文=友清 哲 イラスト=永宮陽子