不手際があっても、責め立てない

客という立場をかさに着てCAを責め立てても、問題が解決するとは限らないことを理解しているのだ。

「クレームだと気づかないことが多いんです。例えば、あるイギリス人の女性経営者は『今日のフライト、すごく良かった』とまずほめてくださった後、『でもこの前と違って今回はこの点がちょっとこうだったわよね。なんでかしら?』と続けられました。それは後々考えると、私たちの不手際を指摘する内容だったのですが、まるで、一緒に考えましょうという雰囲気で……」

CAが「申し訳ありません」と謝る隙も与えなかったという。

「あるカナダ人の女性からは、『機内販売で○○が欲しいのですが、この前も今日もなくって。帰りのフライトのときに用意してもらえますか?』とリクエストされたことがありました。目的のものがなかったと不満を言うのではなく、改善の機会を与えてくれたのです」

イライラを建設的な要求に言い換えて伝える。ぜひ実践したいものだ。

▼必要最低限のことをすませたら休息。あくせくせずに優雅に過ごす

目的地によっては10時間以上に及ぶことも珍しくない国際線。忙しいキャリア女性は、フライトの時間も無駄にしない。ファーストクラスの機内でもバリバリ仕事をこなしている、と思いきや――「お休みになる方が多いです」と鈴木さん。

「VIPのお客さまほど、“時短”に長(た)けている印象を受けます。例えば情報を仕入れるために新聞を読んだり、仕事の書類に目を通したり、パソコンで作業されたり……という光景は目にしますが、何時間も続けるのではなく、必要な作業を終えたら、あとはゆっくり読書をしたり、眠っている方が多いですね」

すべてにおいてあくせくせず、“落ち着き”を感じさせるのが、ファーストクラスの女性たち。シートのモニターで、映画を何本も見ようと張り切る人もほとんどいないそう。

到着後の仕事に備え、機内ではリラックス

「到着後に備えて、休息も大切にされているのでしょう。リラックスするために、部屋着や、ふかふかのスリッパは用意されていますが、慣れたお客さまは最初からくつろぎやすいパンツ姿とフラットなシューズで搭乗することが多いです。同じファーストクラスでも、国内線ではすぐに仕事に取りかかれるようにピシッと決めて、長い路線ではカジュアルで、と使い分ける女性もいらっしゃいます」

しかし機内は気圧の関係で、どうしても乾燥したり冷えたりしがち。そのため、フライト中に体調を崩す人も少なくないそうだが、滞在先でのスケジュールに支障をきたすのは困りもの。

「マスクで保湿をしたり、風邪予防にプロポリスを携帯したり、万全に対策されています」

世界をまたにかけて働く女性は、心身の健康が何よりも大切なことだと、心得ているのだ。