ハードワークの社員が多く、2018年にはブラック企業大賞にノミネートされた野村不動産。会社のカルチャーを抜本的に変えようと、“昭和の男”が立ち上がった。大きな施策は全女性社員700人への健康研修と服装の自由化。果たしてこれでブラック企業を卒業できるのだろうか。

ブラック企業からの脱却を目指して

2018年、野村不動産では全社的な健康施策を推し進める部署としてウェルネス推進課を新設、女性社員全員を対象にした「ウェルネス研修」などを実施している。

人事部担当 執行役員 石川陽一郎さん

ウェルネス推進課を率いる執行役員の石川陽一郎さんは、「社員の健康は会社にとって必要不可欠だと痛感した」と語る。以前の野村不動産では“昭和的働き方”が普通で、ハードワークを武勇伝として語る社員も少なくなかった。それが変わり始めたのはつい最近のこと。2018年、会社が「ウェルネス経営」への転換を発表し、石川さんが風土改革に乗り出してからだ。

その前年、野村不動産は裁量労働制に関して東京労働局から特別指導を受けた。社員の過労自殺を労災認定していたこともわかり、新聞などでも大きく報じられた。2018年にはブラック企業大賞にもノミネート。その企業が今、社員の健康を守るため全社的な改革に挑んでいる。

「社員全員が元気で末長く働ける会社にしたいんです。そのためには、今すぐにでも風土を変えなければいけない。誰もが働きやすい環境、互いに健康を気づかい合える環境を目指して、できることは何でも、どんどん実施していくつもりです」

現在は、労務管理の徹底、健康意識の向上、相談・診断体制の強化などを並行して実施。ウェルネス研修もその取り組みの一つだ。同社の約4割を占める女性社員全員に、健康に関する正しい知識や不調の対処法などを知ってほしいと、ウェルネス推進課の女性メンバーが発案した。

「長時間」ではなく「長期間」働けるように

同課ではほかにも、社内での朝食サービス、マッサージコーナーやストレスチェックコーナーの設置といったイベントを展開。6月からは、グループ内のスポーツクラブの利用代金補助も開始したという。

グループ人事部 ウェルネス推進課長 荘司恭兵さん

健康で充実した日々を送ることができれば、仕事への意欲やエネルギーも高まる。それが個人の成長につながり、やがては会社の成長にもつながっていく──。多くの企業では、こうした考え方がすでに定着しつつある。その点、野村不動産はようやく行動を始めたばかり。大幅な遅れをどう取り戻していくか、石川さんも課のメンバーも試行錯誤を続けている。

 
人事部 ウェルネス推進課 木村さとみさん

「どうすれば社員の心身の健康に役立てるのか、皆でアイデアを出し合って一つずつ実施につなげています。ウェルネス研修も今回は女性が対象でしたが、今後は男性にも広げていかなければ」と、課長の荘司恭兵さん。課員の木村さとみさんも「社員が“長時間”ではなく“長期間”働けるように」と意欲を語る。