乱立する出会い系サービス。安心して使えるものはあるのか。偽アプリの運営会社で働く男性は「いまは『出会い系=さくら』みたいな印象も薄れてきた。ただし、匿名サービスの半分以上は偽アプリだ」という――。

※本稿は、高野聖玄・セキュリティ集団スプラウト『フェイクウェブ』(文春新書)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)

テレクラやダイヤルQ2が源流

通信技術を使った出会い系サービスの源流は、1980年代半ばにはじまったテレフォンクラブ(通称テレクラ)や、1989年にNTTが始めたダイヤルQ2(業者が電話を通じて提供する有料情報の料金を、NTTが通話料と一緒に回収するサービス。2014年2月にサービス終了)で提供されていた、見知らぬ男女が会話をするためのツーショットダイヤルにある。

その後、1995年にマイクロソフトからWindows 95が発売されたことを契機に日本でもインターネットが一般家庭まで普及しはじめ、その流れと合わせるように出会い系サービスもインターネット上に移行していく。サービスのあり方を大きく変えたのは、1999年2月にスタートした、NTTドコモが提供する携帯電話向けインターネット接続サービスiモードの登場だ。それまでの固定電話や固定インターネットを利用したサービスから、手軽に移動しながら利用できる携帯電話が登場したことで、携帯電話向けの出会い系サービスが急増。業者が荒稼ぎできる時代に入った。

出会い系バイトの時給は1100円位だった

2000年代前半に、出会い系サービスを運営する会社で働いていた30代後半の男性が振り返る。

「その会社は携帯電話向けの出会い系サービスを複数運営していましたが、実態はさくらを大量に雇ってユーザーに課金させるというものでした。登録者同士がメッセージをやり取りするにはポイントを購入しなければいけない仕組みで、例えば500円で50ポイント買って、受信したメッセージを開封するのに3ポイント、返信するのに5ポイントが支払われていくという感じです。で、ポイントがなくなったらまた買わせるように仕向けるというサイクルですね。

こっちとしては、登録ユーザーにいかにポイントを使わせるかが勝負なので、気を引く件名のメッセージを送って、いかに開封率を上げる(ポイントを使わせる)かに頭を使っていました。うまくやり取りに持ち込めれば、次はどれだけ話を引き伸ばして送受信の回数を増やすかです。

オフィスには常時数十人のアルバイトがいて、それぞれがパソコンを使って複数の相手とやり取りをするのですが、当時、出会い系サービスに登録しているユーザーの大半は男性だったので、さくらは女性ユーザーを装う形でした。その頃はまだ今のようにシステムも整備されていなかったので、各々が会話のテンプレートを作ってやり取りするようなやり方。品質はバラバラだったと思います。

アルバイトの時給は1100円位と当時の一般的な職種に比べて少し高いくらいで、自分がさくらを担当している登録ユーザーが課金すれば、その金額に応じて歩合が支払われる形態もありました。アルバイトの多くは、バンドマンとかヤンキーとかが多かった印象です。当時流行していたギャル系の10代の女の子なんかもいましたね。髪型や格好で面接を落とされることもないし、運営は24時間態勢なので、そういう人たちにとっては都合のいい仕事場だったからだと思います」