「治療開始前に黙って退職」はもったいない

相談先は、普段からコミュニケーションを取っていて、ある程度信頼関係がある相手がベスト。直属の上司か同じ部署の先輩とそういう関係が築けていれば一番いいですね。そういう相手にどうすれば希望が通りやすいかを考えてから話せば、きっと理解して上へ話を通してくれるでしょう。

仕事のために人生を犠牲にするようでは、長くは働き続けられません。不妊治療や子育て、介護など、誰にでも「今はこれをしたい」という時期があるはず。それを言わずに退職するのは、本人のキャリアにとっても会社にとっても大きな損失です。相談者さんには、まず希望をすべて会社に伝えていただけたらと思います。

そしてもう一つ、仕事と不妊治療のどちらを優先するかは、治療を始めてから考えてもいいのではないでしょうか。両立できる可能性もありますし、やっぱり無理という結論になるかもしれない。いずれも、治療を始めてみないとわからないことです。一番もったいないなと思うのは、治療開始前に何も言わずに退職すること。相談者さんが会社に希望を伝え、そして働くママとして活躍する日が来ることを願っています。

山田 メユミ(やまだ・めゆみ)
アイスタイル 取締役
1995年、東京理科大学卒業後、化粧品原料メーカー入社。97年、化粧品メーカーに転職。趣味でスタートさせたメルマガがきっかけで99年、アイスタイルを創業、アットコスメをオープン。出産の経験から、働き方改革にも力を入れる。

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