前例がなければなおさら「第1号」になって
これまで不妊治療で休んだ前例はないそうですが、実は相談者さんと同じように悩んでいる女性もいるかも。近い将来、不妊治療を決断する人もきっと出てくるでしょう。私は前例がないのならなおさら、相談者さんに第1号になっていただきたいと思うのです。こうした相談は、会社にとっても制度を見直すよい機会になるはずです。
治療中は一時的に勤務スタイルを変える、事務的な仕事にジョブチェンジするなど、会社にできることはいくらでもあります。相談者さんは流産を経験しているそうですから、今の仕事を続けることへの不安も大きいでしょう。もし私が同じ相談をされたら、前例の有無に関係なく真摯に検討して、最大限ご本人に寄り添うよう努力します。
相談者さんは退職する覚悟もお持ちなのですから、相談してダメならそれから辞めても遅くはありません。言い過ぎかもしれませんが、そんな会社ならむしろ辞めるほうが得策かもしれませんよ。
相談した結果、不妊治療のための休暇やジョブチェンジが実現したとします。そうすると仕事と両立しやすくなり、現在の会社で働き続けられる可能性が出てきます。契約社員としての契約内容にもよりますが、そのうち正社員への登用もあるのではないでしょうか。
今の会社で正社員を目指す道もある
子どもが生まれたら正社員に転職したいとのことですが、出産後の転職はなかなか大変。また、一般的に産休も育休も正社員のほうが取りやすいもの。できれば、不妊治療を始めることだけでなく、正社員になりたいことも同時に伝えてみてはいかがでしょうか。これは決して欲張りな希望ではありません。
もちろん、「子どもを授かるまでは会社に縛られたくない」とお考えなら、契約社員も正しい選択だと言えます。その場合も、治療を最優先にできる環境は会社に求めてください。何も言わずに退職するのは、あまりにももったいないと思います。
以前、女性の部下が退職したのですが、私が本当の退職理由を知ったのは随分後になってからでした。本当は、2人目の子どもが生まれて仕事との両立が大変になったからだと人づてに聞き、「言ってくれたら何か対応できたのに」と悔やんだものです。女性、特に責任感の強い人は、周囲に迷惑をかけまいとして何も言わない場合が少なくありません。でも、上司だって部下の役に立ちたいのです。自己完結する前に、ぜひ一度話してみてください。