100%を目指さない
「休んだほうがいいのはわかっている。でも、やることがたくさんありすぎる」という人は多いと思います。しかし、「やらなくてはならない」と思っていることすべてが、本当に必要なことなのか、見直す必要があります。マネジャーが、それを見直すよう促し、見直しのサポートをしてほしいと思います。
日本人はまじめなので、100点満点を求めて「やることリスト」がどんどん広がってしまいます。優先順位をつけて絞り込む必要がありますが、簡単なことではありません。
その時に役立つのが、「このうちのどの仕事が、もっとも成果を生み出すか」を考えることです。
多くの仕事は、1から10まで順番にすべてやらなくても、2くらいまでやれば80%の成果が出るものです。残りの8つをやっても20%の成果しか出ないのであれば、やらなくてもいいと判断します。
実はここで、マネジャーなどのリーダーが、目指すゴールを明確に示すことが重要です。そうすれば部下たちは「この仕事はゴールに直結しないからやめよう」と判断できます。ゴールが明確でないと、どこまでやればいいのかわからず不安になり、すべてをやろうとして長時間労働になってしまいます。
H&M社長を辞めて半年の「休暇」を取った理由
私はH&Mジャパンを離れてからジバンシィ ジャパンに入るまで、半年間の休暇を取りました。毎日家に帰るとママがいるのは、子どもたちも最初はうれしそうでしたが、後半は少しうんざりしていたかも(笑)。
考えるためには、そのための時間が必要です。休暇中は、これから何をやりたいか、自分のキャリアについて考えました。そしてあらためて「働きやすい職場を作りながら会社を成長させたい」「日本の女性に、仕事もプライベートもあきらめることなく元気に働き続けてほしい」「女性のリーダーが増えてほしい」という夢を実現させたいと思いました。こうしたメッセージを多くの人に伝えるために、本を書いたりもしました。
もうすぐ連休です。10日間丸々休めない人もいるかもしれませんが、少しでも仕事から離れてリフレッシュし、自分のキャリアやライフについて考える時間を持てるといいと思います。そして、遠出をしなくても、普段なかなかできない家の模様替えや家族写真の整理、子どもと料理をしたりするのも、良い休みの過ごし方ではないでしょうか。
ジバンシィ・ジャパン プレジデント&CEO
1975年、日本人とアメリカ人のハーフとして生まれ、東京で育つ。97年、マテル・インターナショナルに入社、2000年に株式会社アントステラへ転職。結婚を機にスウェーデンに移住し、05年にストックホルムでMBAを取得。H&M本社に入社。2007年からのアジア進出に伴い、香港でエリア・マネージャーを経験した後、H&Mジャパンの立ち上げから2016年まで代表取締役を務めた。2017年、LVMHファッション・グループ・ジャパンの「ジバンシィジャパン」プレジデント&CEOに就任。二児の母としてもワークライフバランス、フラットな組織や人材育成にも力を入れ、日本女性の社会進出を支援する活動に積極的に取り組んでいる。著書に『Up to you「よくばりに生きる」ためのキャリア戦略』(日本経済新聞出版社)がある。
構成=大井明子 スタイリング=丹きぬ子 ヘアメイク=成田幸代