クリスティン・エドマンさんは、かつて8年間社長を務めたH&Mジャパンで残業を減らし、遠慮なく長期休暇が取れる環境をつくりました。現在社長を務めるLVMHファッション・グループ・ジャパンのジバンシィ日本法人でも、社長自ら社内をパトロールして同様の改革を推し進めているとのこと。“休んで成果を出す組織”をつくる秘策とは――。

「帰りなさい」「休みなさい」と社内をパトロール

私は「早く帰りなさい」「バケーションはいつ取るの?」と言って回る“社内パトロール”をしています。

ジバンシィ ジャパン プレジデント&CEO クリスティン・エドマンさん

みんな責任感が強く、「休みなさい」と言うと「仕事が終わらない」「クリスティンは、私がやっている仕事がどれだけ大変かわかっていない」と返してきます。

私も昔はそうだったので、気持ちはよくわかります。仕事は完璧にやりたいし、人に任せるのは苦手で、1から10まですべて自分で把握しておきたい。独身のころは、当たり前のように毎日残業していました。

だから最初にスウェーデンのH&Mで働き始めたときは、「みんな仕事を早く切り上げるし、1カ月もの長い休みを取る。よく会社が回るものだ」と半分あきれていました。でも実際、会社はまわっているどころか、成果をしっかり出していました。そして日本のH&Mでもそれができた。どの会社でもできないはずはないのです。

疲れすぎると効率が下がっていることに気づかない

早く帰ること、休むことは「なまける」ことではありません。休暇にはたくさんの効用があります。

まずはやはり、リフレッシュです。疲れていたり体調が悪かったりすると、仕事の効率は大きく下がります。しかも、効率が下がっていることに自分で気づかなくなります。

体調不良でも、海外出張の翌日でも出社しようとする人がいますが、私はいつも休むよう言います。しっかり休んで体調を整え、リフレッシュしてから取り組むほうが、仕事がはかどるしクリエイティブに仕事ができるからです。

2点目は、視点を変えられること。忙しいと、近視眼的になってしまいます。仕事の全体像、将来のことに目が向きにくくなるし、今の仕事のやり方をどう変えたらもっと効率が上がるのか、考えられません。いったん仕事から離れ、全体を俯瞰し、違う角度から見る機会がないと、同じやり方を繰り返すことになり成長できません。