数字は絶対ではない。常識を疑おう

石崎順子●大和ライフネクスト代表取締役社長

数字の見方・基礎知識を身につけたら、あとは柔軟な思考力を大事にしてほしいですね。数字は確かに自分のやりたいことを主張するときに有効な手段です。人に説明するときに数字で証明されている事柄があれば、論理的に物事を語ることができます。でも数字は必ずしも絶対ではないと私は考えています。

たとえばKPIなどの数値目標も、設定の仕方によっては経営に有効ではない場合があります。私たちが忘れてはならないのは、いつも柔軟な頭で常識を疑ってみること。そして目の前のことだけでなく、近未来に起こりうる可能性のあることをもいつも想定しておくこと。初級ではそんなことをビジネスウーマンである皆さんにお伝えしたくて3冊を選びました。

そして中級では会社全体の数字を上げていくための組織づくりについて学んでほしいと思います。今は生産性改革の時代といわれています。ではその生産性の正体とは何なのでしょう。

数字のうえでは原価や経費を下げたり、残業を減らしたりすれば利益が上がると出ても、実際はそんな単純なものではありません。人の力の引き出し方や組織の在り方にも気を配ること。これなくして真の生産性の向上はありえないのです。

また『真実の瞬間』に記されているのは、企業は顧客から支持され、価値を認められてこそ経営が成り立つという事実です。顧客と接点を持つ社員全員の、顧客に対する責任意識が会社全体の数字に直結しているということを覚えておきたいですね。

上級では意識をさらに高め、会社の在り方も自分自身の人生もより長期的なスパンで考えるための3冊を選びました。長寿化が進む中、人の働き方も生き方も変化を続けています。社会の変化とともに会社も、そして自分自身も常にイノベーションしていくことが大事です。そしてイノベーションを繰り返していくときの説得材料として、数字を使いこなせれば非常に心強いと思います。

数字で考える感性や経営的なセンスは日常生活の中でもどんどん磨いていくことができます。私は食べることが好きなので、よく飲食店に出かけますが、客単価は? 従業員数は適正?など、いつもお店の経営を想像します。自分の好奇心に従いながら、そんな訓練ができる場面はたくさんあります。数字や情報にとらわれて本質を見誤らないよう感性を磨き、自分の「皮膚感覚」というものも大切にしていきましょう。