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外に出るのを面倒くさがる、温室育ち

Aくんの家で指導をしていると、とても疲れる。Aくんに算数の問題を教えてもなかなか理解してくれないからというのもあるが、一番の理由はエアコンによる人工的な室温が身体にダメージを与えるからだ。Aくんがたった1時間の授業に集中できないのも、この部屋の温度が一定で、刺激がないからだと推測している。

人間は変化のない空間にずっといると、身体感覚が育たない。暑かったり寒かったりといった肌感覚がなく、足裏の感覚も常に一定だと、身体に刺激が少なく、身体感覚が鈍る。そして、いろいろなことに興味を示さなくなる。

タワーマンションの最上階に暮らすAくんは、外に出ることを面倒くさがる。いつも快適な温度の部屋で過ごしているから、「晴れているから外で遊ぼう」「涼しくなったから散歩に行こう」という気持ちにならないのだ。外に出ようと思っても、エレベーターの待ち時間があったり、エレベーターホールから玄関まで距離があったりで、時間がかかる。このアクセスの悪さも面倒くさがる原因になる。

外に出るのが面倒な子は、世界が広がらない。小学生の学習には、イメージが不可欠だからだ。子供は自分が体験したことや見たものでないとイメージできない。イメージができないと頭の中に知識が入りにくいし、そもそも問題を理解できないこともある。だから、実体験の乏しい子は、成績が伸びにくい。

「集める=足すこと」という概念がない

別のタワーマンションの上層階に暮らすBくん(小2)も、外に出ることを億劫がる。母親は教育熱心で、幼少期から早期教育に走っていたが、Bくんの成績は常に低迷。母親はBくんを男子御三家のひとつに入れたいと思っているが、今の成績ではとても叶わない。Bくんは、計算問題は速く解けるものの、文章問題がまったくできない。

Bくんは、算数の足し算が「増えること」というイメージを持ち合わせていない。外遊びの経験が少ないBくんは、公園で砂を集めたり、バケツに水を入れたりといった実体験がないから、「合わせる」「加える」「集める」「一緒になる」といった表現に対して、どういう状態かイメージが持てないのだ。そのため「この問題は足すの? 引くの?」とトンチンカンな質問をしてくる。嘘だろうと思うかもしれない。でも、これは本当の話だ。