ただ、そもそも地上波放送も見ないという人は多いかもしれません。もちろん、テレビ自体を捨ててしまえば、NHKと契約する必要はありませんから、年間約2万5000円、人生80年でも200万円節約できます。

『「先見力」の授業』(掛谷英紀著・かんき出版刊)

ちなみに、テレビを捨てるのがもったいない人は、こちらもチューナーを壊すという手があります。チューナーがなくても、インターネットに接続できれば、インターネット放送やオンラインゲームは大画面で楽しみ続けられます。民放の主要な番組も民放テレビ局が連携した公式テレビポータルサイトTVerで視聴し続けることが可能です。裁判でNHK側が出してきた東京大学の玉井克哉教授の意見書には、「チューナーが壊れている場合は契約の義務がない」と書かれています。よって、BSチューナーだけでなく地上波放送のチューナーも同時に破壊すれば、NHKとの契約そのものを解消できます。

大手メーカーもこうしたニーズにようやく応えようとしています。今年3月にソニーが、テレビチューナーは搭載しないもののOSにAndroid TVを搭載し、インターネットテレビ番組を自由に楽しめるBRAVIAの新シリーズを7月下旬に発売すると発表しました。チューナーを壊すといった手荒なことが苦手な人は、このテレビに買い替えることをお勧めします。

時効を無視した受信料の請求を続けるNHK

NHKとの契約に関しては、もう1つ知っておいてほしいことがあります。それは時効についてです。NHKと受信契約をしたのち、不払いが続いていた場合、5年を超えたものについては時効が成立することが最高裁の判決で確定しています。ところが、NHKは判決確定後も、不払いの人に5年以上の請求を続けています。この場合、一度払ってしまうと取り戻せません。時効の援用をすれば、5年分を超える金額は払わなくていいことが法的に認められていますので、NHKの請求に惑わされないようにご注意ください。

この世の中は、善人の皮を被った悪人で満ち溢れています。4回シリーズはこれで終了ですが、今後も色々な場で隠れた悪意を見破るための情報提供を続けていく予定です。またどこかでお会いしましょう。

掛谷 英紀(かけや・ひでき)
筑波大学システム情報系准教授
1970年大阪府生まれ。93年東京大学理学部生物化学科卒。98年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)。通信総合研究所(現・情報通信研究機構)研究員を経て、現職。専門はメディア工学。NPO法人「言論責任保証協会」代表。著書に『学問とは何か 専門家・メディア・科学技術の倫理』『学者のウソ』など。近著に『「先見力」の授業』(かんき出版)がある。
(写真=iStock.com)
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