ITで「つなげる会社」は、社員同士も「つなげる」
現在のミクシィは、事業が多角化している。SNS時代のさきがけだった「mixi」(04年サービス開始)主体から変わり、「モンスト」(13年開始)の拡大でゲーム事業が大黒柱に育った。家族向けの写真、動画の共有アプリ、女性向けのビューティアプリなど新規事業も立ち上がった。業態の中身はスタートアップ当時からガラリと変わったが、根底にあるコンセプト「人と人をつなげる」は変わらない。中山さんが関わる対戦型ゲームも、小林さんが携わる求人情報サービスもそうだ。
起死回生となった「モンスト」スタジオのエグゼクティブプロデューサーも務めた森田さんは、こう振り返る。
「SNS事業が厳しくなり、13年に上場以来初の赤字を計上した時期に、一緒にやってきた仲間が次々と去っていきました。そこから未経験だったスマートフォン用ゲーム事業に乗り出し、会社は巻き返したのですが、当時と今で社員総数はあまり変わっていません。社長になるときに『誰バスの理論』(誰をバスに乗せるか)を考えましたが、新しい人を次々に入れるよりも、現在いる社員中心で頑張ろうと――。それがミクシィの企業風土でもあったのです」
他社から移った中山さんや小林さんと、以前からいる社員との間に違和感がないのはIT企業らしさでもある。99年設立の会社で、一番年上の女性社員でも40代という若さだ。
「世の中に多くの人がいる中で、同僚として知り合うのは奇跡的ですから、本来、チームメイトであるべきです。限られた時間や人材を外に向けないで、内向きにするのは許しません。もし、社内で派閥をつくれば、役職者なら役職を返上してもらいます」
ミクシィは「新しい文化」をつくるのがミッション
森田さんはこう話し、熱っぽく続ける。
「ミクシィは『新しい文化』をつくるのがミッションです。価値を提供すべきは、外のお客さんで社内の上司ではない。せっかく社長になったので、この方針を徹底しています」
社員全体では男性が多いが、女性登用も進んできた。たとえば「モンスト」急拡大中に産休に入った女性社員は、復帰後に実績を積んでマーケティング部長に昇格した。
「女性比率を増やし、サービスにも多様性を出したい」と語る森田さん。新卒でも女性採用は意識している。17年に入社した総合職10人のうち、男性は1人。残り9人は女性だったという。
「社員の働きやすさをサポートする立場でいえば、子育て時期の女性社員への支援はとても大切です。昔の日本と違って、今は夫婦2人で子育てを行うのが基本ですし、悩んだら、スタッフの7割が女性であるウチの部署が相談に乗っています。安心して働き、女性ならではの感性などを仕事に生かしてほしい」(橋本さん)
ミクシィと「はたらく環境室」にとって、一大プロジェクトが19年に控えている。19年の冬に向けて、渋谷駅近くに建設される大型ビルに本社機能を移転させるのだ。3つのビルに分散入居の不都合も解消され、部門間を隔てている“カベ”も消える。より働きやすい会社を追求する先にあるのは、「人と人をつなげる」ことの未来形だ。
撮影=市来朋久、伊藤菜々子