取り組みが加速したのは、森田仁基さんの社長就任の影響が大きかった。一般社員として入社後に実績を積み、部長→執行役員→社長となった森田さんは、人事部長も兼ねていた。社長直轄となった「はたらく環境課」(当時)は、労務、総務部門を吸収し、従業員が勤務するために必要な制度や契約といったソフトから、設備などのハード面まですべてをワンストップで運営する部門として改革が進めやすかったのだ。
随所にソファや交流スペースを設けた狙い
課が発足して以降も、業績は拡大して従業員も増えた。オフィスは手狭となり、現在は東京都渋谷区内の徒歩数分の距離にある、3棟の大型ビルに入居している。後述するが、19年冬の本社移転を控えた状態である。16年に3つ目のビルに入居する際も、「はたらく環境課」が中心となり執務環境を整えた。ただし事前に社内アンケートは取らなかったという。
「アンケートには、たとえば『シャワールームや仮眠室をつくってほしい』『最寄り駅に近づけて』など、予算や現実性の面で不可能な声も多いのです。業務改善で急いで対応してほしいことは直接言いに来るので、そうした声に向き合いました」
今回の取材で、3つのビルすべてを回った。興味深いのは、随所にソファや交流スペースが目立つこと。会議室もガラス張りで外から見えるものもある。
「ソファを多く置くことで、社内コミュニケーションの活性化をめざしました。現在のように3つのビルに分かれていると、どうしても社員同士が交流する機会が減ってしまう。少しでもそれを解消したいと考えたのです」と橋本さんは振り返る。
働く社員はどう感じているのか。複数のIT企業でエンジニア経験を積んだ中山里紀さん(対戦型ゲーム「ファイトリーグ」の開発マネージャー)は、現場経験を踏まえて話す。
「エンジニアにとって開発環境は大切ですが、不都合があったときの会社の対応は早い。たとえばマシンの手配や必要なソフトウェアの購入も、上長が承認したウェブ上の“依頼チケット”を出せば手配してくれます。仕事用のイスも以前に比べて座り心地がよくなりました。追い込み時期は十数時間も座るので、細かい配慮はいいですね」
「はたらく環境室」では、設備や会社の備品を「全体最適」と「部分最適」で使い分ける。ソファで社員の交流を促しつつ、作業に没頭できる机とイス中心の部屋も用意した。
パソコンなどは全社共通で提供し、業務の特性に応じて導入・管理するものは各部署に委ねる。予算とルールがあるが、裁量の自由度は大きいようだ。