人生に負荷をかければ自分を鍛えられる
「おまえはどうしたいんだ?」と聞かれ、「自分の技術をさらに高めたいし、私の後に続いてくれる人材をどんどん増やしたい」と答えた。すると「じゃあ、今までの仕事は捨てろ」と言われた。
さっぱり理解できず食い下がって「なぜですか。誰よりも真剣に取り組んできたんです」と言うと、「それは俺、見てきたよ。だから大丈夫だと言っているんだ。おまえの今のポジションには後から来る人間が何人も育っているじゃないか。おまえは今の仕事を捨てて次のことをやれ」と。
心がグラっと揺らいだ。出張から帰ると斎藤会長から呼ばれた。
「キミ、喜んでないって聞いてるけど」と第一声。「キミはぶかぶかの上着を着せられて居心地が悪いと思っているだろうけど、みんなそうなんだよ。最初から部長や役員ができるわけではなくて、ほとんどの人は期待値で昇進させてもらうんだよ」
そう語った斎藤会長は最後に「キミたちはスポーツクラブでいつも『負荷をかけることによって筋肉は大きくなります』と話しているんだよね。そう言っているキミが自分の人生ではそれをやらないの?」ととどめを刺した。
「やられたと思いましたね(笑)。さらに『もしキミに部長の仕事ができなかったときは、キミが辞めると言い出す前に僕が肩をたたいてあげるから』と言われて。すごく気が楽になって、じゃあやってみようかなと」
昇進は次の自分がやるべきミッションをつくること。最初は身の丈に合わない服を着せられ動きづらいかもしれない。でもそれは男性も同じ。そのうち服に自分が合ってくる。女性が組織の中で昇進し、自分のためではなく会社やスタッフのためにハッキリと意見を言う。役員となった今、女性が昇進する意義が十分にわかる。
Q.好きな言葉
人生はすべての選択の総和である(カミュ)
Q.趣味
散歩、料理
Q.ストレス発散
夫と話す
Q.愛読書
「流転の海」シリーズ(宮本 輝著)
ルネサンス 常務執行役員
1984年、大阪体育大学卒業後、永新不動産(ホテル ドゥ スポーツプラザ)入社。87年、ルネサンス企画(現・ルネサンス)に転職。営業サポート部の部長代理、教育部部長、品質管理部部長等を歴任。05年執行役員、17年に常務執行役員就任。
撮影=市来朋久