専門家の見方:早稲田大学大学院商学研究科 教授 谷口真美さん
▼弱者救済ではなく、彼らの知識・スキル・能力に着目すべし
LGBT、外国人、障がい者の活躍推進が遅れている理由は、第1に、人口比率という社会的な影響力の差にある。女性は常に人口のほぼ5割、シニア(65歳以上)は27.3%(2016年総務省統計局)。一方、障がい者は、人口の6.2%(2015年障害者白書)、外国人は1.9%(2016年厚生労働省報道発表)、LGBTは、7.6%(2015年電通ダイバーシティ・ラボLGBT調査)にすぎない。
人口比率は、社会的な関心・支持を高め、法的措置へとつながる。女性活躍推進法は、企業に、自主的な数値目標と行動計画を求めている。また、定年延長を促す高齢者雇用安定法も改正された。しかし、外国人、障がい者については、管理職登用などの数値目標はなく、周辺的な職務への配属に限られる。
第2に、彼ら・彼女らの持つ知識・スキル・能力に価値を見いだすというマインドの問題がある。女性の「男性と異なる視点」や、シニアの「若年層が知らない経験」を問題解決に活かそうと考える企業は増えている。しかし、外国人、障がい者、LGBTは、依然として弱者救済という倫理的取り組みが多い。
日本企業でも海外拠点では、外国人登用が進んでいるところがある。それは、日本人にはない知識・スキル・能力を有用と認めるからだ。今後は、例えば障がい者視点で働きやすい環境をつくることが、高齢従業員にとっても働きやすい職場づくりにつながる。LGBTについても、その視点を活かして、福利厚生の改革や市場をLGBT層に拡大することもできる。
人口比率に比例する社会的な関心だけでは、企業は受け身的な取り組みに留まってしまう。知識・スキル・能力への着目こそが、企業が主体的、かつ積極的に取り組みを進めるカギとなるのだ。
撮影=市来朋久